買収先企業を検討する際に
評価すべき「三つの側面」とは
この会社を評価する際、三つの側面から情報収集を進めたことを覚えている。まずは、仕入先からの評価。それから現地での取引先からの評価。最後が、競争相手からの評価である。
同じビジネスを手がけているとなれば、お互いにある程度、競合他社のことを理解している。したがって、対象企業の力量を知るには、同業の他社に話を聞くのが一番早い。技術商社という面から見れば、仕入先からの評価も重要である。そして、技術サポートで頼りになるか、いい技術者がいるかということは、取引先が知っているだろう。実際に競争力を持っているかどうかは、競合他社に聞けば良い。この三つの側面をしっかりカバーしておかないといけない。
こういう情報収集をおろそかにして、決算書の数字だけで判断をするのは、極めて危険である。「儲かっているから大丈夫だろう」「利益が出ているから問題ないだろう」などというような判断では、必ず後悔することになる。
そして最終的な決断にあたっては、必ず社長に会うこと。可能であれば、何度も会って胸襟を開いて議論をすることである。さらにもうひとつは、現場を見ること。現場の人たちが元気良く働いているか、はつらつとしているか、いい雰囲気か。それを実際に見に行って、自分の目で確かめるのだ。
私が会社を必ず見て決めることの重要性を知ったのは、失敗をしたことがあったからだ。ある国内の同業者だったのだが、社長のことは以前からよく知っていた。あるとき、業績が厳しいという評判が聞こえてきていた。社長が病に臥せってしまったのである。創業期には同じ経営セミナーに通っていたから、親近感も持っていた。上場もしていたし、利益も出ていて、お客様もしっかり持っているように見えた。マクニカが支援することによって、業績は上向くと期待された。懸念材料は何もないように思えた。