1972年、26歳の時にパン屋の2階のオフィスでジャパンマクニクス(現マクニカ)を創業した神山治貴・マクニカ名誉会長。その後、マクニカは50年間で連結売上高7610億円、従業員数3900人の東証プライム上場企業に成長した。神山氏は「誰を昇進させるか、この判断を誤ることは非常に危険である」と語る。安易な年功序列が組織を破壊すると考えた神山氏が貫いた「誰もが納得する昇進」とは――。神山氏の著書『経営の本質 すべては人に始まり人に終わる』から抜粋してお届けする。(マクニカ名誉会長 神山治貴)
マクニカが徹底した
実力主義を貫いた理由
誰を昇進、昇格させるか、というとき、まず考えなければいけないのがまわりの社員に納得感があるかどうかということだ。
マクニカは実力主義を貫いてきたつもりだ。それが正真正銘そうであるという、わかりやすい例がある。マクニカでは1981年に新卒入社し、マクニカ一筋で過ごした6人がいる。この全員が同じようなキャリアを歩んだのかというと、まったくそうではない。最終的に6人は、社長、取締役、理事、部長、課長、主事と、六人六様になったのだ。
マクニカは、年を経れば自動的にポジションが得られる年功序列ではない。これだけ長く働いていれば、世間一般の会社では部長以上にはなれるのかもしれないが、そういうわけではない。それでも、6人とも会社の将来を信じてくれたし、正しい方向に向かっていると感じてくれ、働きやすいし、自分ができることで頑張ればいい、と思ってくれたのだと思う。これがマクニカの実力主義なのだと納得もしてくれたのだろう。
では、何をもってして実力主義なのかといえば、基本的には実績である。わかりやすくいえば、実力プラス業績。これだけである。基本的に年齢は昇進においては関係がない、という方針を会社の中では貫かなければならないと、私は考えていた。
実は、年功序列の問題点について、私なりの思いがあった。ひとつは、若いから昇進できない、ということに対する違和感である。よく「まだ若い」という言葉が使われる。特に伝統的な大きな会社では、この言葉がよく使われるが、本当にそうなのだろうか。