個人商店から売上高7600億円へ、マクニカの成長を加速させた「M&A」成功の法則とはPhoto:PIXTA

1972年、26歳の時にパン屋の2階のオフィスでジャパンマクニクス(現マクニカ)を創業した神山治貴・マクニカ名誉会長。その後50年間で連結売上高7610億円、従業員数3900人の東証プライム上場企業に成長させた。マクニカが国内の半導体商社でナンバーワンになった背景には、積極的なM&Aがあった。しかし、うまく行った案件ばかりではなかった。成功事例、失敗事例から神山氏が学んだ「M&Aに成功するための条件」とは――。神山氏の著書『経営の本質 すべては人に始まり人に終わる』から抜粋してお届けする。(マクニカ名誉会長 神山治貴)

やみくもなM&Aは
意味がない

 企業を成長させる上で、M&Aは優れた戦略だと思う。マクニカでも積極的に行ってきた。その狙いは大きく二つに集約される。事業のシェアを拡大させること。そして、事業のエリアを拡大させること、である。

 ただし、やみくもに拡大しても意味がない。技術商社であるマクニカであれば、技術サポートが必要な難しい商品を扱っているから、そういう商品を扱えるような相手を選ばなければ、マクニカが望むようなシェア拡大、エリア拡大にはつながっていかない。

 大きな売上、利益を持っているが、単に右から左に商品を流通して販売するタイプの商社と組んでも、うまくはいかないだろう。ただ、その見極めはなかなか難しい。特に海外となると、簡単にはいかない。

 マクニカは中国へ進出するにあたり、まずは自社資本を投入して香港に進出した。ところが、天安門事件が起きてしまい、政治的リスクを勘案して、シンガポールに移った。だが、シンガポールと中国は距離があるので、再び香港に戻って合弁会社を作ったが、うまくいかなかった。

 四度目の正直は、M&Aがもたらしてくれた。すでに中国市場で成功している、マクニカと似ている技術商社と交渉した。狭い業界である。国外と言ってもお互いの評判はそれなりに耳にしている。この交渉がまとまって、ようやくビジネスが軌道に乗った。

 後日談だが、この会社の社長から、自分たちの力だけでは、いずれ問題を抱えることは意識していた、一緒になるなら、マクニカのような会社が良いのではないかと考えていたと言われたときは、お世辞が半分だとしても率直に嬉しかった。