本当はもっと貯金できるはず?
「使途不明金」に要注意

 しかし実は、試算に当たって気になることがあります。冒頭の相談文には、ご夫婦が正社員で共働きの間は「年間250万円の貯蓄をする予定」とありますが、本来はもっと貯金に回せるのではないでしょうか。

 記載いただいた「世帯年収」は1050万円、「年間支出」は470万円ですから、単純計算で年間の黒字額は580万円です。世帯年収が額面金額だったとしても、Fさん夫婦の手取収入は800万円前後で、収支は300万~330万円程度の黒字のはずです。

 相談文に書き忘れた支出があったり、計算の間違いだったりすれば問題はないのですが、Fさんが把握しきれていない「使途不明金」がかさんだ結果、年間貯蓄額が250万円に減っているのであれば危険です。念のため、家計を確認してみてください。

 こうした観点から、今回はひとまず、年間貯蓄額を250万円ではなく「300万円」と仮定して試算します。

 そうすると、今後の12年で3600万円(300万円×12年間)の試算を積み増すことができ、目標までの不足額を3922万円から322万円に縮小できます。

 加えて、子どもが中学校へ進学後、Fさんは収入を50万円アップできると書かれています。昇給に伴って支出が増える可能性もあるので、ここでは増加額の7割(35万円)を貯蓄に上乗せする形で試算します。

 子どもは現在4歳で、中学1年(13歳)になるのは9年後です。そのため、先ほど試算した12年間のうち最後の3年間は、貯蓄に105万円(35万円×3年間)をプラスできます。不足額の322万円から、この105万円を差し引いた残りは217万円です。

 この時点で52歳のFさんが正社員を辞め、アルバイトかパートに移る(セミリタイアする)と仮定します。以降の年収を100万円とすると、目標額に到達できるのでしょうか。

個人年金を考慮すると
老後の生活はより楽になる

 セミリタイアしたFさんの年収は、子どもが中学校に上がった後の水準(350万円)から250万円ダウンします。それに伴って、年間貯蓄額も335万円(前述の300万円+35万円)から85万円に減りますが、黒字はキープできます。

 その場合、老後資金の目標額(残り217万円)には約2年半で到達できるはずです。年収を100万円未満まで下げて仕事の負荷を減らしつつ、もう少し長く働くのもいいかもしれません。

 さらに、Fさんが月間支出の内訳に「個人年金の積立金」と書いているのも見逃せません。先ほどはあえて老後の収入を「公的年金のみ」として厳しめに試算しましたが、実際には個人年金も支給され、老後の家計収支にさらなる余裕が出る可能性もあります。

 その場合、現役時代に用意する資金は目標額よりも少なくて済むでしょう。

 今回の結論としては、Fさんは52歳まで正社員で勤め、その後は年収を下げて数年間(54~56歳ごろまで)パート・アルバイトとして働くと、希望するライフプランを実現できそうです。

 個人年金の年金額次第では、Fさんは52歳でセミリタイアするのではなく、完全リタイアが可能かもしれません。

 ただ先述の通り、Fさんのご意見が分からなかった点は外部の統計データ(調査結果)をもとに試算していますし、「使途不明金」を考慮して年間貯金額をこちらで増やしています。

 そのため、今回の試算はあくまでも一つのイメージと考えていただければ幸いです。