──どのような場所に塗布されていることが多いのでしょうか?
加来 カパラは工場の安全帯や排水口のふたに使われるグレーチング、工事現場の鉄板、ミキサー車のステップ、駅のホームの階段などに塗布されています。滑ってけがをされる方が多い箇所です。クリアはさらに範囲が幅広く、マンションのエントランスや住宅の玄関、ゴルフ場の浴室床、駅改札や銀行ATMの通路、病院やコンビニの床などに塗布されています。その性能が評価され、弊社が施工した実績だけでも、高速道路運営会社や鉄道会社など100社以上に上ります。
──この商材を扱い始めたきっかけは?
加来 もともと私は1999年に日孝建設を立ち上げ、造成などの事業を手がけてきました。その関係で7年前にエクステリア関係の企業展に足を運んだところ、二つの御影石に水をかける実演をしていたのです。御影石そのままの方は足を乗せると滑るのに、クリアを塗布した方は全く滑らない。見た目は同じなのにすごい、と一目ぼれしました。
カパラはむらなく塗布するのが難しく、施工には左官の技術が必要でした。建設業の弊社には技術を持つ人材がいたので対応できると判断し、新会社を設立して代理店となりました。
──どのように顧客開拓を?
加来 大理石や御影石などを使った、バブル期の立派な建物が滑りやすいと頭にあったので、そういった場所に営業をかけました。まずはゴルフ場にアプローチしたところ、すぐに採用していただきました。そこから建設現場や工場などに広げていきました。
──順調に増やしていかれたのですね。
加来 顧客開拓では東濃信用金庫さんの力も大きかったのです。「東信可児会」という会員の集まりが毎月のようにあるのですが、そこで商品の案内をしたところ、会員の方から注文を頂くことが何回もありました。「実はうちもここが滑るんです」とは大っぴらに相談しにくいものですが、会で親しくなることで、相談しやすくなるようです。また、『中部経済新聞』などのメディアにもご紹介いただき、記事になりました。その記事を見て依頼してきた方もいらっしゃいます。
──今後の展開はどうお考えですか?
●株式会社日孝T&K 事業内容/防滑工事、従業員数/5人、売上高/1200万円(2021年度)、所在地/岐阜県可児市川合887-1、電話/0574-63-7705、URL/hidaka-tk.com
加来 工場の顧客をさらに開拓していきたいと考えています。地元・可児市の工業団地が日本一安全な工業団地といわれるようにしたい。
また、「抗菌プラス」という商品が開発されました。防滑だけでなく抗菌性能も付加できる商品で、こちらもニーズがあるのではないかと期待しています。
あまり知られていませんが、実は転倒転落によって亡くなる数は、交通事故で亡くなる数を大きく上回っています。防滑加工によって、そうした事故を少しでもなくしていきたい。それが私たちにできる社会貢献だと考えています。
(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2022年11月号掲載、協力/東濃信用金庫)