最大のポイントは、当時、技術的に難関とされていた超深穴加工技術を確立したこと。穴径に対する穴深さの割合が、他社技術レベル3・5倍に対し、同13・9倍を実現。従来のドリル加工と比較し、パーツフォーマにより加工時間も1秒に短縮。トランスミッションやパワーステアリング用部品などの中空化により、軽量化、燃費改善、材料費低減などが可能となる。さらに加工が難しい硬い材質(難鍛造材)での冷間鍛造、ネットシェイプ(冷間鍛造で成形しそのまま使用)で切削レスによる材料歩留まり向上が実現するのも同社ならではの強みだ。

自動車のEV化も見据え
新たな事業展開を目指す

 難度の高い冷間鍛造技術を確立、進化させることで取引先も拡大。こうした中空加工技術を応用し、「エアバッグの構成部品であるインフレーター用の高強度鋼管加工についても実験を経て、実用化を目指しています」と土田氏。鋼管加工技術については既に国内特許を取得しており、他の製品への応用や素形材のみの提供ニーズも見据える。

目指すは「冷間鍛造技術日本一」 世界のものづくり産業を支える中小企業庁「戦略的基盤技術高度化支援事業」に採択され、産学連携で開発した高強度鋼管部品。特許取得済みで実用化を目指す
●丸嘉工業株式会社 事業内容/自動車部品、医療機器部品、産業用ロボット部品製造 従業員数/139人、売上高 /38.5億円(2021年度)、所在地/岐阜県各務原市金属団地68、電話/058-382-7171、URL/maru-y.co.jp

 現在直面するエネルギー価格の高騰や半導体などの原材料不足、今後は自動車のEV化によるエンジン関連部品の需要減への対応など、事業環境は決して順風満帆とはいえない。「危機感を持って自社の強みを改めて棚卸しし、次の成長につなげていく新たな事業戦略を練っている最中です」と土田氏。その大前提として社員が働きやすい環境を整備するのはもちろんのこと、誇りに思ってもらえるような会社を目指し、〝丸嘉〟ブランドを冠した技術、製品の開発にも挑む構えだ。

 掲げる目標は大きく「売上高100億円企業」。まずは冷間鍛造日本一の座を確立するべく、技術開発・工法の改善に取り組む日々が続く。

(「しんきん経営情報」2022年11月号掲載、協力/岐阜信用金庫