【相続対策その3:死因贈与の契約をする】

 相続対策として、死因贈与契約を結んでおくという方法もある。死因贈与とは、贈与者の死亡によって権利移転という効力が生まれる贈与契約のことをいう。

 簡単にいうと「自分が死んだら、あなたに○○をあげます」という約束をパートナーとあらかじめ結んでおくということだ。○○には、一緒に住んでいた家や財産といったパートナーに残したいものが入る。「今、一緒に住んでいる家を確実にパートナーに残したい」というケースでは、死因贈与はかなり有効な手だてだ。死因贈与契約を結べば、「所有者である自分が死んだら、次はこの人が所有者になります」という順位を示す所有権移転の仮登記をすることが可能になるからである。

 自分の死後に誰にどんな財産を残すのかをあらかじめ決めておくという点では、遺言書と近い。遺言書との最大の違いは、一対一の契約であり、贈与する側・される側双方の合意が必要となることにある。負担付死因贈与といって、「介護をしてくれたら、一緒に住んでいるマンションをあげる」といった条件を付けることも可能だ。

 双方合意のもとで契約が成立するため、死因贈与することや何を贈与するのかを贈与される側に秘密にしておくことはできない。また、贈与される側も合意して契約した以上は財産の受け取りを放棄することは基本的にはできない。

 死因贈与は口頭でも行うことができるが、口約束では死因贈与契約を結んだことを証明することは難しく「契約した」「そんなはずはない」といったトラブルに発展しがちだ。手数料と手間をかけてでも、死因贈与契約公正証書を作成しておくとよいだろう。

 贈与者が亡くなって財産が権利移転する際には、贈与税ではなく相続税が適用になる。遺留分に留意しなければならないことや、法定相続人ではないことで税制上の特例や控除などが適用されないことは、相続対策その1、その2と同様だ。