胡錦濤の退場は、新しい習近平体制の象徴だったのかもしれない

《つまり、このことは中国共産党のエリート中のエリートたちが一体どんな人間なのかを暴露した。彼らは基本的な人間的な感情も持ち合わせていないのか? …(中略)…年老いた指導者に対して、仲間だった人間に対して、もし体が思うように動かないようなら思わず手を差し出すのが普通じゃないか? あんな連中に改革や民主を期待するのは、完全に寝ぼけている。人間の心に根付くものを、あんな人間の心を持たない連中に求めてどうなるんだ?》

 そして呉氏は、今後の習近平体制はこれまでよりも、もっともっと締め付けが厳しい時代に入るだろうと論評している。習近平はがっちりと力を固め、胡錦濤や江沢民など前任者が育て上げた人たちを中枢から追い出し、過去の派閥をすべて遠ざけた。「これからは、習近平体制下で新たな派閥形成の時代に入る」というのが呉氏の見立てである。

 袁莉さんによると、この日の夜から多くの中国人たちが今後の心配を始め、徹夜で海外移住の道を論じ続けているという。週が開けた24日には中国関連株が暴落した。特に香港は「2008年のリーマンショック以来」といわれる大暴落となったが、それを「新体制に対する不安」と論ずる評論家は誰もいなかった。香港国家安全維持法に問われるのが恐いからだ。

 こうして党大会最後の「胡錦濤の退場」は同時に新しい習近平体制を印象付ける、強烈な幕開けとなった。