秋山 リモートだとしゃべり方も変わりますね。話者が一文をいったんちゃんと終わらせ、少し間を置いてからでないと、次の話者がしゃべれない。音声がかぶって聞き取れなくなるからです。相手の話にかぶせながら話題をせり上げていくようなブレストには向きませんね。オンラインで脳がだまされないことに加えて、話し方や文法も影響しているのではと思います。同じ内容のミーティングを対面とオンラインで行うと、全く別物になります。

川島 私たちのミーティングや雑談でも、オンライン会議では、コラボレーションのアイデアが全く出ませんでした。予定調和の会議はできますが、サムシング・エキストラを望むのは無理なのです。

秋山 人前で話すなど、反論されたり、恥をかくかもしれないと思ったりする危険空間のほうが脳の活性度が上がるということはありますか。

川島 脳自体はそのほうがよく働きます。みんな気づいていないと思いますが、コロナでリモートという安全圏でもできる仕事ならば、実はあなたでなく、AIがやってもいい仕事なのです。会社があなたを雇用する意味はない。対面で、ヘッドクォーターで新しいものを作る仕事とAIでもできる仕事とどちらが楽しいかという問題です。ヘッドクォーターの人間だという自覚がない人は、もう対面には戻れない。人間は弱く、やすきに流れるものですから。お金を稼ぐだけなら、その安全圏からは出なくてもいいかもしれませんが、それは結局頭を使う人と手足を使う人という分断を生むもとではないでしょうか。

 コロナで強いられた状況ではありますが、一度味わうと、多くの人が便利で楽だと感じ、そこから戻ってこられなくなっている。ただ、ほとんどの業種はオンラインの定型的なやりとりの次元を超えなければビジネスが成り立たないはずです。対人関係ベースの営業は最たるもので、リモートでは信頼関係が築けない。世界的にも多くの企業が対面に戻しているのは、そのことを経営者が実感しているからです。