岸田政権が倒れる前に
(1)~(4)を実現したい

 投資家としては、そして投資家の立場に立つべき金融庁としては、岸田政権が存続しているうちに、(1)~(4)をぜひ実現しておきたい。この機を逃すと、次のチャンスがあるのか否かが心配だ。

(3)は交渉事だし、税の世界の住人を相手にする場合に数字を刻まれるのはある程度仕方があるまい。

 その代わり、現行のつみたてNISAの制度をベースに、(1)恒久化と(2)無期限化は、ぜひ今回決めてしまいたい。

(1)、(2)、(3)は既存のつみたてNISAのシステムの限度を変えるだけなので、システム上の制約はないはずだ。

 ルール設定の上でもシステム開発的にも(4)は少々面倒だが、「枠は簿価ベースで管理する」などとルールまでは決めてしまいたい。例えばルールを(5)に決めて、別途管理すべき「成長投資枠」のような複雑化の要因がなければ、システム開発は間に合うだろう。

 いずれにせよ、「枠」の復活がない制度になると、新しいNISAは使い勝手が大幅に劣化する。ここは金融庁に大いに頑張ってほしい。

「成長投資枠」は、金融業界内でも対象商品に議論があろうし、仕組みとしてもシステムとしても制度を複雑化する厄介な要因だ。今回の新しいNISAの実現とは切り離して、今後の検討課題として、何年でも議論するといい。議論の結果、成長投資枠自体が不要だという結論になっても構わない。

 なお、既存のNISAで投資されていた個別株式については、受け皿が決まるまで、利益非課税を延長する特例扱いにすればいいのではないか。規模的に大した金額ではない。じっくり持っていてもらえばいい。

 まだスケジュール化されていないが、岸田内閣の退陣とともに国民は「新しい資本主義」という問題設定をほどなく忘れることになるだろう。一方、制度改正を実現すれば、新しいNISAは長く国民の役に立つはずだ。

 新しいNISAを幻にしてはもったいない。