「パクリは、ブランドを毀損する禁じ手だ」と思うだろうか。確かに丸パクリは良くないが、一部分を上手に真似るのは、時に有効だ。強いブランドは、他ブランドの成功パターンをうまく取り込んでいる。
※本稿は、乙幡満男『儲かるブランドは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。
「丸パクリ」は顧客を騙し、ブランドを毀損する
皆さんは、「『串カツ田中』と思って入ったら、全く違う串カツ屋だった」とか、「ドラッグストアで、あるメーカーの洗剤を買ったつもりで家に帰ったが、よく見たらデザインはそっくりだが別の会社の商品だった」といった経験をしたことはありませんか。
気づかないままということもあるかもしれませんが、買うはずだったものと違うものを買ってしまったことに、がっくりと肩を落としたかもしれません。あるいは、「見た目に騙された」「もう二度と間違えないぞ」など、買ってしまった商品に対してネガティブな感情を抱いた人もいるでしょう。
ブランドが顧客をがっかりさせることがあれば、評判を落とすことにつながります。パロディのように、楽しむためのわざとらしい「パクリ」は別ですが、顧客を騙すような「丸パクリ」は、ブランドの毀損にしかならないのです。
具体例を挙げてみましょう。東京2020オリンピック・パラリンピックの公式エンブレムについて、最初に発表されたデザインが、ベルギーの某劇場のロゴに似ているという理由で採用見送りになったことを覚えているでしょうか。このとき、インターネット上などではデザイナーにも多くの批判が集まりました。
ビジネスにおいては特に、「真似をして利益を得る」ということに世間がネガティブな反応を示します。ネガティブな評判はブランドの価値を落とすだけではありません。場合によっては企業全体のイメージダウンにつながったり、訴訟につながったりするリスクまではらんでいることを理解しておきましょう。