韓国メディアの報道姿勢が変わった理由

 韓国メディアが報道姿勢を変えたのは、DNAで出生を調べられるブドウに「韓国産だ」とうたうのはもはや現実的でないと判断したからではないだろうか。

 それに、日本のシャインマスカットは韓国の技術で栽培することが難しいと分かった。ならば、味の安定している自国産のブドウを品種改良して、自国の技術に伴ったブランドブドウを開発する方が、長い目で見たときに利益になる。

 加えてここ数年は、日本も苗の持ち出しに厳しく対応するようになってきた。ブドウはもちろん、過去に流出したイチゴのとちおとめや章姫、かんきつ類の不知火などのように、韓国品種・韓国産として国内外に販売してきたものが、今後は叶わなくなる。そうなる前に代替品が必要だ。

 何よりも、国際社会から中国と同じような扱いをされることは韓国人のプライドが許さない。先ほどご紹介した韓国メディアや韓国国民のコメントにもあったように、彼らのなかに「他国のものをコピーして販売することは、中国と同じで恥だ」という認識が韓国内に広がりつつある。コピー製品を減らそうという動きは今後強くなっていくのではないだろうか。

今後、韓国へのブドウ流出は止まるのか

 シャインマスカットが韓国や中国に流出したことによる、日本の経済損失は年間100億円超と言われている。韓国や中国で栽培されたブランド果物はそれぞれの国で売られるだけでなく、香港など他国へ輸出・販売されるため、市場も被害も年々拡大している状況だ。

 シャインマスカットの味が落ちて人気がなくなった今、ルビーロマンやマイハートの需要が韓国内で高まることは間違いないが、それでもシャインマスカットほどの人気にはならないだろう。

 韓国メディアが日本の苗を韓国に持ち込んで栽培し、高値で販売することに異議を唱え始めたのだから、韓国国民がメディアの論調に賛同するようになれば、高いカネを出してまで日本の高級ブドウを買いたいと思う韓国人は減る。需要がなくなれば、韓国農家も日本産の高級ブドウに手を出さなくなっていくだろう。

 だからといって、日本側もこれまでと同じような姿勢を取っていてはならない。2022年11月21日には長野県警須坂署などが、ナガノパープルの枝をフリマサイトで無許可販売した男性2人を摘発した。こういうことをする人々が日本国内にいる限り、海外へのブドウ流出は免れない。韓国側の意識を変えると同時に、日本側の意識も変える必要がある。