10月から社会保険の適用範囲が拡大された。これによってパート主婦などで自ら社会保険を払わなければならない人も増えた。支出減を嫌い、加入義務が発生しない水準にまで仕事を減らそうと考える人もいるだろう。しかし、社会保険加入で得られるメリットを考えると、決してそれは得策ではない。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第251回では、社会保険加入者が得られるおトクな給付について見ていこう。(フリーライター 早川幸子)
支出増だけじゃない、社会保険適用で
もらえるこんな「おトク」な給付
10月1日から、パートタイムやアルバイトなど、短時間労働者への社会保険の適用範囲が拡大された(本コラムの第249回参照)。
国民皆保険制度をとっている日本では、国籍を問わず、この国で暮らす全ての人に、なんらかの公的な医療保険に加入することを義務付けている。75歳未満の人の加入先は、職業に応じて異なり、(1)企業などに雇用されている労働者が加入する「健康保険」、(2)自営業者や無職の人などが加入する「国民健康保険」の2つに大別される。このうち、(1)の健康保険の加入者が、これまでよりも増加したことになる。
勤務先で健康保険に加入すると、毎月の給与から保険料が天引きされ、手取りが減るため難色を示す人もいる。特に、適用拡大によって保険料の負担が増えるのが、サラリーマンの夫に扶養されているパート主婦たちだ。
パート収入が130万円未満の妻は、保険料を負担しなくても、夫の勤務先の健康保険に被扶養者(扶養家族)として加入している。収入が130万円を超えると、扶養から外れて、妻本人が保険料を負担して健康保険や国民健康保険に加入しなければならない。そのため、配偶者の扶養の範囲に収まるように、働き方を調整している人も多い。
だが、今回の改正で、従業員数101人以上の事業所で働くパート主婦は、年収106万円以上(月収8万8000円以上)になると健康保険への加入義務が発生することになった。年収106万円の人の保険料は、健康保険と厚生年金保険などを合わせると15万円程度。これを差し引くと、手取りは90万円程度になってしまう。
だが、同じ事業所で働くパート主婦でも、年収106万円未満だと適用拡大の対象にはならない。そのため、年収106万円を境に、手取りの逆転現象が起こる。これが、俗にいう「年収の壁」だ。今回の改正で適用拡大の対象になった人のなかには、年収の壁を超えないように、労働時間を調整することを考えている人もいるだろう。
だが、社会保険は、負担と給付がセットになっており、保険料を負担した分だけ、それに見合った給付が用意されている。健康保険も、夫の扶養に入っているパート主婦よりも、自分で保険料を納めているパート主婦の方が、万一のときには充実した給付が受けられる。そこで、今回は、保険料を納めることによって得られる健康保険給付について、改めて確認しておきたい。
●パート探しのときは「付加給付」がある保険組合がお勧め