イノベーション(2)
業界タブーをまったく気にしない

 ネットフリックスのオリジナルコンテンツについて、別の視点から特徴を挙げさせていただきたいのが、業界タブーを気にしないという話です。

 ネットフリックスのライバルであるテレビ業界には、さまざまなタブーがあります。ところがネットフリックスを見ているとそのタブーを頻繁に破るようなシーンが目につきます。

 たとえば、「全裸監督2」のキャストの中にはコカインで有罪(執行猶予)になったピエール瀧さんが自然な形で出演しています。同じく違法薬物のMDMAで有罪になった沢尻エリカさんも、「Followers」というネットフリックスオリジナルドラマで早期復帰しています。

 一方で、地上波がそう考えない理由はスポンサーの目があります。不祥事があったタレントを起用するとスポンサーが難色を示すのは、視聴者のごくごく一部がスポンサーに直でクレーム電話をするからと言われていて、一度不祥事を起こしたタレントが復帰しにくい業界タブー構造を生んでいます。

 この点でネットフリックスは、才能があれば世論はあまり気にしないのです。これがタレントの起用だけではなく、番組企画自体にも表れています。簡単に言えば、地上波が企画段階で捨てている「攻めた企画」がネットフリックスのオリジナル番組では採用されるのです。

 さて、私がこの記事の冒頭に山手線のラッピング広告列車の話をしたのは、実は車内の広告にあるコピーを見つけたからです。

「山手線の平均乗車時間11分48秒ということで、今際の国のアリス シーズン1を11分48秒でまとめた動画を上映中」というのがそのコピーです。