これまで民主労総内部の意思決定は、指導部の意思統一を図った上で「スト撤回を決めるので組合員は承認してほしい」という方式で投票を行ってきたが、今回は「スト撤回かどうかを組合員の投票で決めてほしい」という方式で投票を行った。つまり、指導部では決定できず、組合員に責任を転嫁したのだ。
それだけ追い詰められたということであろう。
今回の投票率は13.67%と伸び悩んでおり、朝鮮日報は、「組合員たちは貨物連帯の現執行部を事実上ボイコットしたとまで言われる」と報じた。
また、労働団体からは「1995年11月の民主労総発足以来、今回のように政府に完敗した事例は見いだし難い」との声が出ているという。
民主労総は14日に第2次ゼネスト・総力闘争大会の開催を計画していたが、9日になりこれも電撃撤回した。
民主労総は当初、貨物連帯を通じ、尹錫悦政権による労働市場改革に反対する力を結集する計画であったが、逆に民主労総の闘争の原動力は失われてしまった。
文在寅政権の左翼的政策に
多くの韓国国民が拒否反応
民主労総は、文在寅政権が庇護してきた。文在寅政権は最低賃金の大幅引き上げ、労働災害に関する罰則の強化など、民主労総の要求を次々に受け入れ、民主労総は韓国最大の労働党団体に成長した。それに伴い、民主労総の要求は一層過激になった。
韓国経済の不確実性が増している中で、民主労総が過激な要求を繰り返し、規制改革による経済基盤の強化に反対するならば、韓国経済の再生はおぼつかないだろう。尹錫悦政権としては、文在寅政権の支持基盤となった民主労総の権力をはく奪することが経済再生に不可欠な条件であった。それは文在寅政権の経済政策からの否定を意味するだろう。
今回、民主労総が政府に対抗する力を削がれる上で決定的な要因となったのは、貨物連帯のストを通じ、韓国国民が文在寅政権の左翼的政策にノーを突き付け、尹錫悦政権の「法と原則による経済社会運営」を支持したことである。