ロシア・ウクライナ戦争は長期化の様相を呈している。戦争終結に向けたハードルはより上がっており、ロシアによる核兵器使用など戦争のエスカーションが懸念される。果たして、ロシアは核兵器の先行使用に踏み切るのか。特集『総予測2023』の本稿では、ロシアの核兵器使用シナリオを大胆に予測する。(防衛研究所政策研究部長 兵頭慎治)
戦争終結の出口見えず
第二次世界大戦以来の核攻撃の懸念も
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ戦争は、長期化の様相を呈している。戦争終結に向けた出口は全く見えておらず、むしろ核使用など戦争のエスカレーションが懸念されている。
ウクライナ軍は欧米諸国から供与された兵器を用いて、東部や南部の攻防戦で善戦している。22年9月上旬、ウクライナ軍は東部のハルキウ州の大半を電撃的に奪還し、南部へルソン州の州都からロシア軍を追いやった。
戦況はウクライナ主導で展開しているが、ウクライナのゼレンスキー大統領が目指すロシア占領地域の完全奪還は容易ではない。一方でロシア軍は、正規兵の半数以上が死傷するなど戦力が損耗し、精密誘導弾を中心として兵器の枯渇も進んでいる。
ロシアにとって悪化する戦況を打開すべく、ロシアのプーチン大統領は22年9月下旬以降、(1)30万人の部分動員(2)ウクライナ東部、南部4州の「併合」(3)核使用の軍事的威嚇(4)4州への戒厳令導入――の4枚のカードを矢継ぎ早に切った。次々とカードを切ることで、後戻りのできない強硬姿勢に自らを追いやっているといえる。
次ページでは、果たしてロシアのプーチン大統領は核兵器の先行使用に踏み切るのか。その場合、核兵器はどこで先行使用するのか。そのシナリオをつまびらかにする。