総予測2023#74Photo:SOPA Images/gettyimages

度重なる北朝鮮のミサイル発射など、軍事的緊張が続く朝鮮半島情勢はどこへ向かうのか。特集『総予測2023』の本稿では、韓国の対北朝鮮政策の焦点や、大きな変化の途上にある韓国の対日政策を解説。日韓関係で最大の懸案事項である徴用工問題の行方、2023年中ごろ以降は韓国政治の不安定化が避けられなさそうな理由などを一挙に大展望する。(慶應義塾大学教授 朝鮮半島研究センター長 西野純也)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

朝鮮半島情勢は2023年も
軍事的緊張の高まりが続く

 朝鮮半島情勢は、2023年も軍事的緊張の高まりが続くだろう。

 北朝鮮による22年のミサイル発射回数の多さは特筆すべきものがあるが、それだけが理由ではない。同年9月には、最高人民会議で核使用に関する法令が制定され、金正恩委員長は、先に核放棄をすることはないと演説していたのだ。

 さらに、金委員長は、10月には戦術核運用部隊らの軍事訓練を指導し、11月には米国本土に届くとされる大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17号」の試射を娘と共に見守った。そして、このICBM発射が成功だと表明した。つまり、北朝鮮は核・ミサイルの開発に加え、今や実際の使用を視野に入れた態勢を整備しつつある。

西野純也・慶應義塾大学教授 朝鮮半島研究センター長にしの・じゅんや/慶應義塾大学教授 朝鮮半島研究センター長 1996年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2005年韓国・延世大学大学院で博士号取得。専門は現代韓国朝鮮政治、東アジア国際政治。

 21年の朝鮮労働党第8回大会で示された「国防力発展5カ年計画」を着実かつスピード感を持って実行しており、23年もこの流れが大きく変わることはないだろう。

 また、7回目の核実験の実施も十分あり得る。核ミサイルの多弾頭化や固体燃料化などをさらに進め、米国との間で「核保有国」同士の軍縮交渉に臨むための準備が当面続くことになる。

 一方、韓国・尹錫悦政権の対北朝鮮政策は、防衛と抑止に力点が置かれ、結果的に南北の軍事的緊張はさらに高まらざるを得ない。

次ページでは、南北の軍事的緊張が高まる中で、23年における韓国の対北朝鮮政策の焦点を解説。また大きな変化が起きている韓国の対日政策について、日韓関係で最大の懸案事項である徴用工問題の行方、今年中ごろ以降は韓国政治の不安定化が不可避の理由などを一挙に明かしていく。