アメリカ人の興味はドル円相場より、米長期金利動向

 介入が多少なりとも効果を発揮するのは、互いの政府が協力して行う「協調介入」です。しかし、インフレに苦しむアメリカがドル安を許容するとは思えません。自国通貨高はインフレ退治の最大の武器だからです。どの国も自国のことが第一です。

 2022年9月頃のことですが、モルガン銀行時代のアメリカ人同僚から「為替介入についてどう思うか?」とのメールが来ました。

 彼は実際には「覆面介入(stealth intervention)」という言葉を使っていたのですが、これを見てさすがにアメリカ人もドル円相場が気になりだしたのかと思ったら、そうではありませんでした。

 このところ連日「介入警戒感」についてのニュースが流れており、ドル売り・円買い原資調達のために財務省が米国債を売るのではないか。すると、追随して日本人機関投資家が米国債を売るのではないか。すると、アメリカの長期国債の価格が下落する、すなわち長期金利が上昇するのではないか。彼はそれを気にしていたのです。

 つまり、「アメリカの長期金利はどうなるのか」のほうが、為替よりよほど興味があるようでした。為替介入の口先介入が米国債売りを連想させ、日米金利差拡大で円安要因になるという実例です。