日航・新ロゴを発表する大西社長日本航空の新ロゴ「鶴丸」を発表する大西賢社長(左)を見つめる稲盛和夫会長(2011年1月撮影、肩書はいずれも当時) Photo:JIJI

「経営の神様」と称された稲盛和夫氏は、時に凡人には思いも寄らない言動をすることがあった。日本航空(JAL)の再建時には、それによってJALの社長すらも振り回された。その理不尽とも思える言動をご紹介するとともに、裏に隠されていると思われる稲盛流経営哲学を考察したい。(イトモス研究所所長 小倉健一)

「JALの稲盛和夫」を語れる
対照的な2人の人物

 2022年11月28日に、同年8月に亡くなった稲盛和夫氏の「お別れの会」が開催された。京セラの創業者で、KDDIの前身である第二電電も創業し、日本航空(JAL)の再生まで担った「経営の神様」に別れを告げるため、そうそうたる人物が集まった。

 日本電産の永守重信会長は、次のように稲盛氏の在りし日をしのんだ。

「優しさと厳しさを併せ持っていた人だったので、何を言われても学ぶことができました」「年齢が一回り違う大師匠としてずっと稲盛さんや京セラをまねして学んできた。スポーツと同じで強い人と練習すると自分も強くなれる。ずっと生きていてほしかったと思うときがあり寂しい」

 他にも、堀場製作所の堀場厚会長兼グループCEO(最高経営責任者)、建築家の安藤忠雄氏、ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授らも、稲盛氏との別れを惜しんだ。

 稲盛氏との縁が深い人物は、当然ながらJALにも多い。JAL再建の途中にあって、メディアの前にJALを代表する形で登場した人物が主に2人いる。一人は植木義晴氏、もう一人が大西賢氏だ。

 詳細は後述するが、スター的存在の植木氏に対して、大西氏は稲盛氏の叱咤(しった)を一身に浴び続けた。今回光を当てたいのは、そんなボコボコにされたサンドバッグとしての大西氏だ。それを通して、稲盛氏の人間性を描きたいというのが筆者のもくろみなのである。