中国がウイグル人の独立を
認めないのはなぜか
欧米諸国は中国政府がウイグル人の人権を侵害し、ジェノサイド(民族大量虐殺)を行っているとして激しく非難している。
弾圧が激化した発端とされるのが、2009年の区都ウルムチでの騒乱だ。ウイグル人のデモ隊と治安部隊が衝突し、暴徒化した一部が漢民族の商店などを襲撃。これに怒った漢民族がナタやこん棒を手にして大規模な報復を行い、行方不明となったウイグル人は1万人に近いともいわれている。
以前から中国は漢民族の新疆ウイグル自治区への移住を推し進めていたが、反テロを掲げてウイグル人の貧困撲滅、漢民族への同化政策を強化。職業訓練と中国語教育を施せば、貧困から抜け出してテロに走ることもなくなると説明している。
しかし、自治区に設けられた施設収容を生き延び、国外に逃れた人々からは、その実態は強制労働、拷問、虐殺だとする証言が出ているのだ。
国連の報告によると、2018年までにウイグル人ら100万人以上が中国政府によって強制収容されたと推定されている。強制不妊手術や産児制限も行われており、自治区で暮らすウイグル人はもはや少数派になってしまった。
新疆ウイグル自治区は中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」のルート上に位置していることに加え、石油や天然ガスなどの資源を豊富に埋蔵している。だからこそ、中国政府はウイグル人の独立を認めることはできず、“民族浄化”と疑われるような弾圧を続けているのである。