最大1500万円の非課税枠がある教育資金の一括贈与の特例は、2023年3月末の期限で廃止が濃厚だった。ところが政治判断で一転して“延命”が決まった。利用が低迷し、富裕層に有利な制度との批判があった特例はなぜ存続したのか。特集『相続&生前贈与 65年ぶり大改正』の#3では、教育資金の一括贈与特例が存続した背景を探った。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
1500万円まで非課税の教育資金贈与は
2026年3月末まで3年延命
岸田政権の子育て・教育支援を重視する方針に反する──。
今回の改正で、廃止が濃厚とみられていた教育資金と結婚・子育て資金の一括贈与の特例が“延命”された。教育資金は3年延長し2026年3月31日まで、結婚・子育て資金は2年延長して25年3月31日まで使えるようになった。
相続税・贈与税の法改正の論点を議論した政府税制調査会の専門家会合は22年11月、二つの特例を「廃止すべきだ」とする見解を示していた。利用件数の大幅な減少に加えて、富裕層に有利な制度であり、世代を超えた格差の固定化につながりかねないことが廃止を提言した理由だ。
ところが一転して、延長が決まった。冒頭のような自民党内からの主張が通り、政府税調の判断を覆す、政治判断での存続だ。
次ページでは、専門家会合で廃止が提言された教育資金贈与の特例が延命した理由について深掘りする。