さよなら!生前贈与 #5Photo:PIXTA

相続税の節税手段として有効な生前贈与には、今しか使えないお得な特例がある。最大1500万円の非課税枠がある教育資金の一括贈与は、2023年3月の期限で廃止される方針が濃厚だ。特集『さよなら!生前贈与』(全9回)の#5では、実質的な増税へとつながる生前贈与の特例廃止の議論が進められている理由を探る。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

教育資金贈与の非課税の特例は
「廃止が適当」と政府税調

 教育資金や結婚・子育て資金に係る非課税措置は、廃止する方向で検討することが適当ではないか――。

 2023年度の税制改正大綱の策定に向けて、相続税・贈与税の法改正の論点を議論した政府税制調査会の専門家会合は11月8日、子供や孫に対して一定額まで非課税で贈与することが可能な二つの特例措置について、廃止すべきだとする見解を示した。

「教育資金贈与」は最大1500万円、「結婚・子育て資金贈与」は最大1000万円の非課税枠があり、特例が使える期限はもともと23年3月末までだった。まとまった額を非課税で贈与でき、節税効果の大きいこの二つの特例について、専門家会合は期限を延長する必要はないという判断を下したのだ。

 一方、23年度の税制改正大綱に向けた各省庁の要望では、文部科学省などが教育資金贈与の2年延長と非課税枠の拡大を、内閣府などが結婚・子育て資金贈与の2年延長を求めていた。

 なぜ政府税調の専門家会合は廃止を推奨する決断を下したのか。それには大きく二つの理由があった。