民事での賠償額は
数十万~数百万円か

 民事ではどうか。SNSではスシローの株価が一日で百数十億円下落したことを受け「株価が下がった分を損害として賠償請求すべき」などのコメントが散見されるが、そもそも株価下落で損害を被ったのは株主であり、スシロー側ではない。

 損害賠償請求訴訟を起こすなら株主であり、所有する株価が下がったことによる金額を請求するのが筋だろうが、動画が拡散した事実と株価が下がった因果関係を法的に立証するのはまず不可能で、現実的ではないだろう。

 それではどれぐらいの請求額になるのだろうか。株価と同様、動画が拡散した事実と売り上げが減少した(場合の)因果関係を法的に立証するのは難しい。ただ、各社とも「厳正な対処」を表明しているだけに、清掃や備品の入れ替え・交換などにかかった実費だけ請求というわけにはいかないだろう。

 全国紙社会部デスクによると、実はこうした行為に対する損害賠償請求訴訟というのはあまり例がなく、具体的な相場というのは不明らしい。ただ、東京都多摩市の老舗そば店で2013年、アルバイトの男子大学生4人が「洗浄機で洗われてきれいになっちゃった」のコメントを付けて洗浄機に横たわったり、顔を突っ込んだりする画像などを投稿。

 ネットで炎上する事態となり、倒産に追い込まれたそば店は4人に1385万円の損害賠償を求めて訴訟を起こしたが、結局、200万円を支払うことで和解が成立したケースがあった。ただ、この訴訟はそば店が個人経営で、さまざまな出来事が重なったこともあり疲れ果てていたのだろうと推測される。

 しかし、回転ずしチェーン各社は違う。全国展開する組織力と財力があり、抑止力・再発防止のためには中途半端な交渉に応じるつもりはないだろう。

 前述のデスクは「この件で弁護士何人かと話しましたが『よくて実費だけ』『風評被害なども含め実費プラスアルファ』『動画拡散前と直後の売り上げを精査しきっちり請求すべき』など、回答はまちまちでした。ただ『払えない金額を請求してもペナルティーにはならない』という点では一致しており、行為によって数十万~数百万円と幅がある気はします」と説明。その上で「やはりスシローの件は高額になるでしょう」と予想した。