関西電力を皮切りに、多くの大手電力会社で発覚した送配電子会社による顧客情報漏洩問題。一部で営業活動に使用していた関電の悪質性が際立ち、国の委員会の立ち入り検査が入った。新たな不祥事が発覚した関電に新電力側は“逆襲”を仕掛けている。さらに、関電のライバル、大阪ガスの出方にも注目が集まる。特集『電力バトルロイヤル』(全6回)の最終回では、電力・ガス、新電力の入り乱れた大乱闘の様子に加え、関電の不祥事で急浮上する電力会社“解体論”を紹介する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
顧客情報の管理体制の不備
大手電力8社で明らかに
2022年12月末以降、関西電力などの大手電力会社で、送配電子会社から小売り部門への情報漏洩(ろうえい)が続々と発覚した。
大手電力の送配電子会社が管理する新電力の契約名義などの情報を、大手電力の小売り部門が閲覧できる状態だったのだ。同様のファイアウオールの不備は関電のほか、東北電力、九州電力、四国電力、中国電力、中部電力、沖縄電力、北陸電力の大手電力8社で明らかになった。
そのうち関電では既に、一部社員が閲覧した顧客情報を営業活動に使っていたことが分かっている。つまり、新電力から客を奪い返すことに利用していたのである。悪質性が高く、国の委員会の立ち入り検査も入った。
「大手電力小売りが送配電子会社から得た情報を営業活動に不正利用しているのではないか」。かねて新電力側はそんな疑念を抱いてきた。しかし状況証拠はあっても、確たる証拠はないため「泣き寝入り」状態だった。
疑念に裏付けがやっと追い付いてきたのである。
ただ、複数の新電力幹部は「今回の件では怒りだけでなく、あきれている」と話す。次ページからは、新電力幹部らの証言を基に、関電と新電力の根深い因縁をひもとくとともに、新電力側が仕掛けた“逆襲”も明らかにする。加えて、実は、関電のライバルである大阪ガスの出方にも注目が集まっている。どういうことか。
今回の情報漏洩問題は、電力自由化の理念を踏みにじる極めて重い行為である。関電など大手電力の不祥事の発覚に、関係者の間でにわかに浮上しそうな電力会社の事実上の“解体論”も紹介する。