新電力 節電地獄#1Photo:PIXTA

資源高の直撃で業績悪化が進む新電力は、家庭や法人に節電を促す今冬の節電プログラムを境にさらなる苦境へ追い込まれるリスクがある。特集『新電力 節電地獄』(全11回)の#1では、節電策実施の有無を踏まえ、新電力大手67社・組合の経営危険度ランキングを作成した。3位に節電策を実施するエナリス・パワー・マーケティングが入った。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

“逆ざや”で疲弊の新電力業界
節電プログラムでさらなる苦境も

 システム導入のコストが大き過ぎて、弊社は節電プログラムを実施しません――。

 今冬の節電についてダイヤモンド編集部が取材を進めると、一部の新電力からこんな悲鳴が聞こえてきた。新電力とは、電力小売り自由化以降に市場参入してきたニューフェースの電力会社のことだ。

 国は今冬の電力需給逼迫を回避する策の一つとして、電力会社の節電プログラムをサポートする。簡単に言えば、プログラムへの参加表明だけで電力使用者である家庭は2000円、法人は20万円を受け取れる。さらに節電目標を達成すれば複数の特典が与えられるのだ。何とか危機を乗り越えるための、まさに苦肉の策である。

 電力使用者が特典を受けるには電力会社があらかじめ国に節電プログラムの実施を申請し、採択されることが条件だ。これまでに約300社(販売代理店など電力小売事業者以外を一部含む)が申請したことが明らかになっており、約700社に上る電力小売事業者の4割ほど、電力販売量ベースでは95%超をカバーしている。

 裏を返せば、残りの6割に当たる約400社は申請をしていない。

 その理由を見ていくと、「他に節電を促すスキームがある」などといった事情はあるが、冒頭のようなコスト増を嫌って参加を見送る企業も少なくない。近年の資源高で、調達コストが販売収益を上回る“逆ざや”状態に苦しむ新電力の偽らざる思いなのだろう。

 ただし、以前から独自に節電プログラムを実施してきた一部の電力会社からは「うまく実施すればコスト以上の収支改善効果がある」との声もある。従って、業界内には「今冬の節電プログラムに取り組まないのは『もう電力小売りを諦めている』と言っているのと同じだ」との厳しい意見もある。

 ダイヤモンド編集部では、今冬に節電プログラムを実施するかどうかも踏まえ、厳しい経営環境に置かれている新電力を対象に「経営危険度」ランキングを作成した。日本初の本格的な「節電の冬」を前に、『新電力「経営危険度」ランキング【大手23社】5位エネット、1位は?』の拡大版を紹介する。

 次ページでは、新電力大手67社・組合の経営危険度ランキングを完全公開する。3位になったのは大手のエナリス・パワー・マーケティング(PM)だった。同社は節電プログラムを実施する予定で、ダイヤモンド編集部の取材に対し、節電プログラムの収支改善効果について強調している。