電力バトルロイヤル#4Photo:JIJI

大手電力4社のカルテル事件で707億円もの課徴金納付命令案を受けた中国電力。カルテルを持ち掛けた関西電力の“裏切り”のダメージが直撃したとみられ、4社でも最高額となった。燃料価格の高騰も追い打ちとなり、今期予想は過去最大の1740億円もの最終赤字に沈む見通しだ。同社は電気料金値上げで立て直しをもくろむが……。特集『電力バトルロイヤル』(全6回)の#4では、業界関係者の間でささやかれる、同社を襲う電力バトルロイヤル時代の容赦ない「最凶シナリオ」を追う。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

規制料金値上げの公聴会
「中国電、出直してきて」

「いま中国電力から電気料金のお願いなどされたくありません。(カルテル事件などの)事実を明らかにしてきちんと説明してから、改めて出直してきてほしい」

 経済産業省が2月9日に広島市で開いた、中国電力の家庭向け電気料金の値上げに関する公聴会。大方の予想通り、出席した瀧本夏彦社長らに対して複数の陳述人から厳しい意見がぶつけられ、荒れ模様となった。

 関西電力、中部電力、九州電力、中国電力の大手電力4社が絡んだカルテル事件を巡り、公正取引委員会は2022年12月1日、関電を除く3社に対して課徴金案(27億~707億円)を示した。

 独占禁止法に詳しい松田世理奈弁護士によると、一般には課徴金案の提示から正式命令までは2~3カ月を要するという。今年度内には課徴金納付命令が下るとみられる。

 課徴金案では、3社では会社規模が最も小さい中国電が最高額の707億円を示された。その上、関電を含めた4社のうち、燃料価格の高騰を受け、「規制料金」と呼ばれる家庭向けの電気料金の値上げを国に申請したのは中国電だけだった。

 それもそのはずだ。他3社が原子力発電所の再稼働や高い自己資本比率を背景に値上げに踏み切らずに済むのに対し、中国電は再稼働した原発がゼロ。その上、23年3月期第3四半期の自己資本比率は11.6%とかなり低い水準だ。

 燃料価格の高騰に巨額の課徴金が直撃し、今期は過去最悪の1740億円の最終赤字となる見込みだ。同社はこれで2期連続の最終赤字となる見通しで、このままでは電力の安定供給や投資に支障を来すレベルとなる。

 中国電にとって間が悪かったのは、値上げ申請直後にカルテル事件の課徴金案が判明したことだ。「規制料金値上げの内訳に課徴金は織り込んでいない」。中国電がそう強調しても、家庭や企業の不信感は相当なものだろう。

 では、カルテル事件は値上げに影響するのだろうか。多くの電力業界関係者の見立ては「値上げ幅の縮小があったり、審査が長引いたりはするかもしれないが、値上げは認可されるだろう」というもの。中国電は4月の規制料金の値上げを目指すとともに、国の認可が不要な自由料金(家庭向け、法人向け)も同じく4月に値上げする。

 しかし、値上げが順調に進んだとしても、中国電が窮地を脱することができるかは不透明だ。次ページでは、カルテル事件を巡り中国電がはまった関電の“裏切り”の内幕について明らかにする。さらに、中国電には電力バトルロイヤル時代の容赦ない「最凶シナリオ」がささやかれている。その災いの主とは、再び関電だという。どういうことか。