過去よりも未来が重要と
述べた韓悳洙首相
韓悳洙(ハン・ドクス)首相は6日、国会で行われた政治・外交・統一・安全保障の対政府質疑に出席し、日本による植民地時代の徴用工訴訟問題の解決に向けた政府の方向性について「韓日関係は現在われわれが置かれている外交・安保状況や経済状況からみて、過去に執着しすぎるよりは未来に向かって進むべきだと信じている」と述べた。
尹錫悦大統領の日韓関係への取り組みを見る限り、この発言は大統領の考えでもあると言えるだろう。
また、日本の側でも、韓国政府が過去に日韓の合意を度々反故にしてきたことに不信感を抱き、尹錫悦政権になってからの韓国の変化に目をつぶっている。
尹錫悦大統領が、韓国政府に合意をほごにするよう圧力を行使してきた市民団体の改革に取り組んでいることが、韓国の変化の何よりの証拠である。
元慰安婦や元徴用工の支援団体となってきた市民団体は、問題が解決されれば、政府や地方公共団体の補助金が大幅に削減され、市民の寄付が集まらなくなる。文在寅政権になってから、市民団体への政府の補助金は毎年4000億ウォン(約420億円)増額され、年間5兆ウォン(約5200億円)を超えるに至っている。
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元慰安婦を支援してきた正義連の元代表尹美香(ユン・ミヒャン)氏(現国会議員)は、補助金等の不正使用で5年の懲役刑が求刑され、判決待ちである。日韓で元慰安婦問題が解決されていたならば、政府の多額の補助金を不正に使用することはできなくなる。これを見れば、日本への抵抗活動が一種の補助金ビジネスとなっていると批判されても過言ではないだろう。
尹錫悦政権は市民団体の活動を本来の趣旨のものに改めるため、補助金を適切に使用してきたか調査に乗り出している。
日本としても、韓国政府のこうした取り組みは評価し、尹錫悦政権との信頼関係を築いていくべきであろう。
韓悳洙首相の述べた方向性は、現在の日韓の国益につながる正しい方向性であり、この考えが両国の多くの人々と共有されることが重要である。
(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)