テレワークでも健康でいられるための方法

 では、どうすべきか。津下教授によれば、まず大切なのは在宅勤務であっても、オフィスで働いている時と同じような生活のリズムをつくりだすことが大事だという。

「まず、これまで通勤をしていた分に同じような運動をすることです。例えば、1時間かけて会社に電車通勤をしていたという人は、在宅勤務でも始業時間ギリギリまで寝ているのではなく、出勤時と同じ時間に起床をして1時間弱ウォーキングなどをしてからテレワークをするのです。また、出勤していた時は昼休みに、会社から歩いて10分ほど歩いたところでランチしていたというのならば、在宅勤務でも同じようにお昼はちょっと近所を散歩してみてもいいでしょう」(津下教授)

 もちろん、根本的なところでは、健康リスクを高める「座りっぱなし」を減らしていくことが重要だ。そのため在宅勤務の場合は、「Web会議のハシゴ」にならないような取り組みが必要不可欠だという。

「Web会議も時間ギリギリではなく、10分前や5分前に終わることを心がけて、次の会議までブレイクするようにする。その際にはオフィスのように移動や動き回ることがないので、スクワットやストレッチをする。本当は会社側がそのようなルールを決めてくれるといいと思います」(津下教授)

 ただ、やみくもに運動をすればいいというわけではない。

 コロナ禍で在宅勤務が増えたという人の中には、運動不足解消のためにジョギングなどをしているという人も多いだろう。もちろん、それはそれで素晴らしいことではあるのだが、普段体を動かしていなかった人が急に運動を始めて心臓に負担をかけてしまったりと、かえって健康障害のリスクを高めるケースもあるという。

「運動というのは気負わずに続けられることが大事です。毎日の歯磨きのようにルーティン化するほど定着しやすい。例えば、在宅勤務の日は、マンションのエレベーターを使わず4階分くらいは上り下りをすると決めておく。そうやって無理することなく、日常の中に自然に運動が組み込んだ方が続けやすいと思います」(津下教授)

 これを踏まえると、日本のサラリーマンの「電車通勤」というのは「働く人にとって理想的な運動習慣」といえるのかもしれない。朝起きて駅まで歩き、階段を上り下り、電車で立ち続けて体幹を鍛える――。日本人の多くは、こんな健康習慣を30年以上も続けている。世界一の長寿になるのも納得ではないか。

 世界では、GAFAなどITテック企業を中心に在宅勤務縮小の動きが出ている。それは主に従業員同士のコミュニケーション不足などの観点だが、もしかしたらそろそろ「出勤した方が健康だ」という理由で、在宅勤務廃止の動きも出てくるかもしれない。

(ノンフィクションライター 窪田順生)