国立歌劇場とのスケジュール調整も
奏者が所属するウィーン国立歌劇場や他国の招聘元との調整も、楽団長らの重要な仕事のひとつである。ウィーン国立歌劇場は、9月から6月のシーズン中、約300に及ぶオペラやバレエを上演しており、ほぼ毎日幕が上がっている。
ウィーン・フィルの奏者はみな国立歌劇場管弦楽団員であることから、歌劇場での演奏とウィーン・フィルの公演スケジュールとの調整が必要となる。ウィーン国立歌劇場の運営側と常に良好な関係を保ち、ひとたび問題が起これば彼らと交渉をするのも、楽団長と事務局長の大切な役割だ。
対外的にはウィーン・フィルの顔として、楽団長と事務局長がメディア対応を行ない、オーストリアの他のオーケストラとの会合にも代表として参加する。
2023年現在、楽団長は第一ヴァイオリン奏者のダニエル・フロシャウアー、事務局長はコントラバス奏者のミヒャエル・ブラーデラーが最初の任期3年の後に再選されて2期目を務めており、147名の奏者をまとめ、渉外にあたっている。
楽団長は「顔」、事務局長は「頭脳」
現在の運営体制で特筆すべきは、表に出て奏者をまとめる楽団長と、裏方を仕切る事務局長のコンビネーションの妙である。
楽団長フロシャウアーは、元日にNHKで生中継されているウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでも、毎回のようにNHK単独のインタビューを受けている。
インターミッションの間に生のコメントを出して日本語で挨拶しているのを見たことのある人も多いだろう。コロナ禍では国内外のインタビューに常に率先して答えており、ウィーン・フィルの顔としての役割を果たしている。
生粋のウィーンの音楽家、フロシャウアー
フロシャウアーはウィーン生まれ、父も祖父も音楽家である。父ヘルムート・フロシャウアーはウィーン少年合唱団出身で、ウィーン音楽院で学んだ後に指揮者となった。
カラヤンのオペラで長く合唱指揮を担い、晩年はドイツ・ケルン放送管弦楽団の首席指揮者から名誉指揮者になっている。
フロシャウアー自身もウィーン少年合唱団出身で、ヴァイオリンで頭角を現し、16歳でウィーン国立歌劇場のオーケストラピット入り。17歳からはザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルの一員としてステージに立った。その際にカラヤンの指揮も経験している。