数十人の演奏者が密集し「3密」となりやすいオーケストラ。コロナ禍で公演中止が相次ぎ、債務超過目前で苦境に陥るオケからは悲鳴が上がっている。一方、実はコンサート回数が減っても、収支的には何とかやっていけるオケも存在する。特集『コロナで崩壊寸前!どうなる!?エンタメ』(全17回)の#15では、両者の違いがどこから生まれるのか、それぞれの収益構造を解剖する。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
このままでは債務超過に突入
苦境に陥るオーケストラ
「このままでは債務超過は免れない」(日本フィルハーモニー交響楽団の平井俊邦理事長)――。主にクラシック音楽のコンサートでの演奏料を収入源とする日本のプロオーケストラから、こんな悲痛な叫び声が上がっている。
バイオリンやチェロ、フルートやクラリネット、トランペットからティンパニに至るまで多彩な楽器により、数十人単位で構成される華やかなオーケストラは、観客だけでなく演じる側も密集する「3密」の代表格。欧州ではオケの楽器演奏による感染リスクは低いとの実証実験も行われているが、今年は2月から6月ごろにかけ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、演奏会を取りやめる動きが広がり、公演中止が相次いだ。
国内には、プロとして活動するオケ(日本オーケストラ連盟の正会員・準会員)が計37ある。そのうち、年10回以上の自主演奏会を行うなど規模の大きな正会員が25あり、この中の多くを占めるのが、主に演奏料収入によって収支を成り立たせている民間の自主運営型のオケ(通称・自主オケ)だ。彼らのような存在は、多くの演奏会をこなさないと収支を釣り合わせることができない。
何しろ、演奏料収入を稼ぎ出すため、2019年度に国内で最も公演回数が多かった東京フィルハーモニー交響楽団では主催公演(定期演奏会・特別演奏会)と委託公演(委託演奏会やオペラ公演など)を合わせ、年400回以上もコンサートを行っていた。それが今年はコロナによる自粛の影響で、年前半に大量の公演が中止に追い込まれた。一方で何十人もの規模のオケは人件費などの固定費が重くのしかかり、今後も感染拡大の先行きが読み切れない中で、多くの民間自主オケが未曽有の危機に陥っているのだ。
一方で、実はプロオケの中には、公演数が大きく減ったとしても、持ちこたえられるところもある。彼らは、収益構造が自主オケとは大きく異なっているからだ。次ページでは、それぞれの財務基盤がどうなっているのか探ってみよう。