VUCA時代を生き抜くためには、初めに目的を見定め、そこから達成に必要な手段を逆算し、望む未来を実現させる「バックキャスト思考」を使いこなすことが不可欠だ。これからの時代、望む未来は待っていればやってくるものではない。しかし、実現の意思があるなら、未来は創り出すことができる。目的とは、その起点に他ならない。

目的とは「何のために?」
という問いに対する答え

 変化めまぐるしいこの時代の中で、あらためてなぜ目的が大切であるのかをここまで伝えてきた。ここからは目的そのものにより接近して、その本質を捉えていきたい。

 目的がなかなか理解しにくいのは、その内容が抽象的でつかみどころがないことが理由としてあげられそうだ。さしあたって、直観的な理解のために、目的を次のように捉えておこう。

「何のために?」という問いに対する答え、それが目的だ。

「何のために」制度改革を行うのか?「何のために」新システムを導入するのか?「何のために」全社組織を再編するのか?「何のために」M&Aを実行するのか?

 この「何のために」が指し示すところ、それが目的だ。実務の中で目的を考えようとするとき、この問いが目的を捉えるための基本となる。

 しかし、僕らはその直観的な理解を超えて、目的に対するより深い理解に挑んでみよう。思考の起点であり主軸であるからこそ、目的に対する理解はぶらさないでおきたい。だからここでは目的が意味するところの中心を、その言葉のおおもとに立ち戻って取り出してみよう。

「目的」を英語で表すとき、それには次の3つの単語が当てはまる。

●Purpose(パーパス)
●Objective(オブジェクティブ)
●Goal(ゴール)

 これらはいずれも「目的」を意味する単語だ。そしてそれぞれの単語は、目的が持つ異なる性質を照らしている。3つの単語が表す目的の性質を考え合わせ、目的の本質に迫ってみよう。

未来の到達点を
どう描くかは僕ら次第

 まずPurpose(パーパス)とは、その語源を見ると「前に置かれたもの」(pur「前に」+pose「置く」)を意味する。ここでいう「前」は、いまよりも先の時点=将来と解釈ができるし、現状よりも高い価値を実現している状態とも解釈できる。