社会保障制度を維持できるか

 先に記したように、中位推計の場合でも、高齢化はきわめて深刻だ。それは、高齢者と現役世代の人口比を見れば、明らかだ。

 図表1-5では「出生中位」と「出生低位」の比較を示したが、ここから分かるように、2020年には一人の高齢者をほぼ現役2人で支えていた。ところが、2040年にはほぼ1.5人で支えることになるのだ(注1)。

 だから、仮に高齢者一人当たりの給付がBで変わらないとすれば、現役世代一人当たりの負担は、B/2からB/1.5になる。つまり、0.5Bから0.67Bへと33.3%増えることになる(注2)。これは、大変な負担増だ。しかも、賃金は今後もさして伸びないと考えられるので、負担の痛みは、きわめて強いだろう。

 後期高齢者医療制度では、すでに負担増が行なわれている。2022年10月1日から、医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担割合が、これまでの「1割」または「3割」から、「1割」「2割」「3割」の3区分となった。一定以上所得のある人は、現役並み所得者(3割負担)を除き、自己負担割合が「2割」になる。

 今後は、負担増だけで対処することはできず、給付を相当程度引き下げざるをえないだろう。年金については、支給開始年齢を、現在の65歳から70歳に引き上げるといった対策が必要になるだろう。

 なお、国民年金保険料を65歳まで納付する議論がスタートした。また、65歳以上の人の介護保険料(国の基準をもとに、市区町村が決める)を引き上げることも議論されている。これらの議論のゆくえも注目される。

(注1) 「出生中位」とは、出生率が2065年に1.44に収束していくとの仮定。「出生低位」では、1.25に収束する。なお、図表1-5はいずれも死亡中位。
(注2)ここで示したのは概算である。正確な計算を、次回行なう。