<会話術>

 ここでのポイントは、面接時の会話の中で“定義した要求事項への回答をいかに引き出せるか”である。

 応募者との会話の中で、その人柄や話しやすさに流されてしまい、本来収集すべき情報が曖昧になってしまえば、事前に定義した要求事項に関する情報が上手く収集できず、結果的に「感覚的な評価」で採用せざるを得なくなってしまう。

 以下、具体的なケースを設定して、会話による情報収集の手法を解説していく。

<ケース1>自社の弱み(=欲しいスキル)を伝えて相手のスキルを見極める

 採用面接というと、自社がどれだけ優れているかといった「強み」を語ることが多いように思いがちである。しかし、採用では、「自社が欲しい人材の要件」を「自社の弱み」に置き換えて、はっきりと提示するほうが有効だ。

 例えば、チームを組成して活発に議論する企業風土を強化したい企業において、「自社では活発に議論できる人材がいない(=欲しい人材の要件)」という事実を明確に伝える。そして、「実は先日もあるプロジェクトで議論が停滞してしまった」などと話してみて、応募者の反応を見るのだ。

 こうした面接官の話を聞いて、「そうだったんですか」といった無難な感想を述べる応募者であれば、採用側が望むスキルはないと考えてよいだろう。逆に、「私は、テーマを決めた議論には経験と自信があります」と、積極的な反応を見せる人であれば、スキルがある可能性はある。ただし、恐らく、ほとんどの応募者は無理をしてでもアピールしようとするだろうから、即断はできない。

 そこで面接官は応募者に対し、これまでの経験を聞いたり、理詰めで具体的な回答を引き出すように質問していくことが本当の実力を知るコツである。

 ここで満足する答えが得られれば、一定の評価を与えてよいだろう。逆に具体性のない回答に終始する場合は、疑問が残る。この際、相手に不快に思われたくないと尻込みしてしまうと、具体的な情報は得られない。質問し終わった後に、「よく分かりました、非常に興味があったのでたくさん聞いてしまいました」などとフォローすればよい。