根本的な施策が打てていないのは、日本も韓国も同じ

 韓国政府ももちろん何もしていないわけではなく、この20年、さまざまな少子化対策を行ってきた。子育て世帯である筆者もさまざまな恩恵を受けてきた。例えば、「多文化家庭」と呼ばれる国際結婚家庭、もしくは子どもが3人以上いる「多子女家庭」では保育園や幼稚園の入園順位が優先になったり、小学校以上でも、有料の選択課外授業に補助金が出る、1年間の牛乳無料といったサービスが受けられたりする(地域によって支援内容は異なる)。また高等教育についても、高校の無償化や、大学の入学金廃止、奨学金の門戸を広げるなど、多様な努力をしている様子がうかがえる。

 妊娠・出産を支援するための施策も行っている。最近ではソウル市がソウル居住の妊婦に対して1人につき日本円で約7万円の交通費の補助を行うことを発表した。所有するクレジットカードやデビットカードにポイントが加算され、公共交通機関の利用や自動車の燃料費に使用できる。また、ソウル近郊の京畿道揚平(ヤンピョン)郡は1人目の出産では300万ウォン(約30万円)、2人目では500万ウォン(約50万円)、3人目は1000万ウォン(約100万円)と、国内の自治体で最も高額の出産祝い金を支給していることでも知られる。地域によって内容や金額は異なるものの、10年前には妊娠出産に関する支援がほとんどなかったことを思えば、隔世の感がある。

 一見、日本よりも少子化対策が進んでいるかに見える韓国だが、効果があるどころか、実際には少子化に歯止めが利かない状態となっている。また、韓国の人口が日本と比して半分であることを考えても、少子化の改善の兆しは限りなく低い。若者から見れば、現在は不景気や物価高騰など明るい話題がない上に、特に教育にかかる負担や親世代の結婚や育児をする姿に、将来の理想や希望が見いだせないというのが正直なところなのだろう。

 どれだけ税金を投入して支援を行ったとしても、結局はその根底にある「結婚をして子どもを産み育てやすい環境を整える」ということができなければ、支援をしても結果は出ない。

 多少の差異はあっても、韓国も日本も状況は似たようなものだ。「結婚をして子どもを産んでこそ一人前」という概念が崩れた今、やはり、少子化を少しでも改善させるには、社会の根本的な部分を変えていかなくては何の解決にもならないということであろう。