税理士になるには、通常、税理士試験で合計5科目の合格が求められるが、そのうち3科目を占める税法科目の合格を一部免除できる方法がある。科目免除制度だ。大学院修了によって、税法3科目のうち2科目を免除申請できるのだ。だが、その大学院選びを誤ると後悔することも。特集『資格・大学・大学院で自分の価値を上げる! 学び直し“裏ワザ”大全』(全11回)の#8では、大学院の入試難易度と共にその選び方を伝授する。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
一発勝負になる試験合格よりも
税理士に「急がば回れ」で近づける
「税のプロ」として活躍できる人気国家資格、税理士。それだけに試験突破に必要となるハードルはかなり高い。
税理士試験は、「会計学」に属する「財務諸表論」「簿記論」の2科目と、「税法」に属する所定の科目から選択した3科目(「法人税法」と「所得税法」のうちいずれか1科目は必須)の計5科目の合格が必要となる。だが、5科目全てに一発合格できる“猛者”はまずいない。毎年1~2科目を受験して何年もかけて最終合格を果たすのが通例だ。
しかし、一発勝負で運にも左右される試験に比べれば、より確実に税理士の道が開ける「急がば回れ」のルートがある。大学院修了による科目免除制度だ。
大学院で「租税法」に関する一定の単位を修得して修士論文を書き上げ、その修論が国税審議会の審査で認められれば、税法科目3科目のうち2科目が免除される。残る税法1科目は試験に合格する必要があるが、必須科目はなく、「消費税法」「相続税法」「酒税法」「住民税」などから自由に選択可能だ。ちなみに、会計学においても、会計学にまつわる修士論文によって1科目を免除できる。
「大学院では、試験のような知識を身に付けて限られた時間内に解答する、ということとは全く違う能力・努力が求められる。資格取得後、税理士としての活躍度に差はないが、大学院では税法はもちろん、他の法律も理解する力(考える力)を身に付けられる。知識は税理士になった後で身に付けられるが、法律を理解・解釈する力は独学では難しい。大学院での研究・学修の意義はそこにある」と、大学院受験予備校、河合塾KALSの小林幹雄講師は言う。
加えて、税理士の資格を取った後も、OB会など大学院修了者のネットワークが仕事などにつながることも隠れたメリットだ。
ただし、気を付けたいのは、受験する大学院の選び方。まず科目免除を受けられる大学院は、法学研究科以外にも、経済学研究科や商学研究科、経営学研究科などさまざま。おのおのの研究科に租税法学の論文指導ができる教員(教授や准教授など)がいるか否か、そして、租税法に関する授業科目が一定数用意されているか否か、次第だ。
「税理士試験科目の一部免除を得られるならば、どの大学院でも構わないはずが、入試難易度の高いブランド大学院を目指して余計な受験勉強と費用をかけてしまう人が少なくない」(小林講師)。
そこで次ページでは、税理士「税法」科目免除大学院の入試難易度ランキングを作成した。肝に銘じておくべき受験校選びのポイントと共に掲載する。