タワマンは
日本の住宅政策の象徴

 タワーマンションは日本人の新築信仰と狭い国土によって生み出された象徴的な建造物だといえる。そして政府の住宅政策によって誘導された側面も見逃せない。

 なぜならタワーマンションこそ、狭い敷地の中に、新築のきらびやかな住まいを大量に生産でき、消費需要を喚起し、経済的にもプラスの効果を生み出すからだ。

 人々は喜んで高額のローンを組んでタワーマンションの住戸を買い、新しく家具や家電製品を購入して引っ越してくる。分譲したデベロッパーは多大なる利益を上げて業績を伸ばす。建設したゼネコンは建築費をしっかりと回収できる。耐久消費財は売れる。金融機関は安定収益を生む住宅ローンを提供する。そして、それらはGDPに反映されていく……。

書影『限界のタワーマンション』『限界のタワーマンション』(集英社新書)
榊淳司 著

 タワーマンションの開発と分譲は多くの業界を潤し、経済成長に貢献する。そして新築好きの日本人にとっても豪華な共用施設が充実したタワマンは満足度が高い。そこにいったい何の不都合があるというのだろう。行政も業界もそう考えて当然である。

 しかし、目先の利益に惑わされて、タワマンばかりを建設してきた結果が、住宅の過剰供給であり、空き家の急増である。

 これまでタワマン建設によってさまざまな問題が浮上している。急激な人口増によるインフラの崩壊、育児や教育現場の混乱、建設に伴う立ち退きや近隣住民への日照阻害、風害の問題……。

 今やタワマンは、そこに住む人だけの問題ではない。完全に社会問題化しているのだ。住居としてタワマンを選ぶということは、いったいどういうことを意味するのか、今一度、考えるべき時に来ているといえるだろう。