納品ミスや高い離職率が課題
ボトルネックの洗い出しとIT化

 06年、刺しゅうで名入れした入園グッズやキャラクターワッペンなどのEC事業を始めた。

 保育園や幼稚園に入園する際、園児の持ち物全てに名前を付けるのが必須で、親は大変な労力を要する。この作業の軽減を図れないかと考えた同社は、名入りのシール、ワッペン、タオルなどをインターネットで手軽に注文できる仕組みを他社に先駆けて確立した。案の定、好評を博し、注文は急激に増えた。

 現在、同社のECサイトでは1日平均100件の注文があり、繁忙期である1~3月の入園シーズンになると1日1000件を超え、ピーク時には1日1700件に上ることもある。EC事業は右肩上がりで成長しているが、それに伴い業務量も増えてきた。

刺しゅう加工会社のミノダが試行錯誤の末に獲得したDX成功の秘訣刺しゅうの名入りワッペンなどが好評を博す一方で、業務量の増加により課題が出てきた

 受注すると、刺しゅう部位・納期・送り先などが記載された「加工指示書」を作成するところから、作業が始まる。

 以前は、顧客からばらばらの書式で届いた注文書から、8人のアルバイトのオペレーターが手作業で刺しゅう工場用の加工指示書に書き換えていた。

 繁忙期は作業が追いつかず、オペレーターが終電で帰宅するような状況になり、書き間違いなどのミスが発生していた。それにより納品ミスが起こり、クレーム対応で電話のやりとりに時間を割かれ、代替品を作るために他のラインを止めるといった多大なロスが生じていた。

 そのため、社員やパート、アルバイトのモチベーションが下がり離職率は高かった。従業員は30人ほど(繁忙期の臨時採用は除く)だが、せっかく雇用しても2年ごとに新規採用を繰り返すはめになっていた。

 箕田社長は、そんなミスやクレーム、離職をなくしたいという思いから、WEBシステム導入によるIT化にかじを切った。なぜ間違いが多いのか、数字や形式で管理できる業務は何か、といった業務のボトルネックを洗い出しながら、IT化でムリ・ムダ・ムラをなくすよう徹底した。

 きちんとした加工指示書があればミスを防げると考え、ECサイトの立ち上げを機に50万円をかけて加工指示書のデータベース化に取り組んだ。その後もさまざまなシステムにトライするが、実際は失敗の連続。数百万円単位でコストだけが増えていくなど、DX成功への道のりは険しかった。