社員の「リスキリング」が注目されて久しいですが、実際にリスキリングに取り組めている企業はまだまだ少ないのが現状です。「取り組んでいる」という企業でも、意識の高い一部の社員のみが行っていたり、スキルを習得しても生かす場がなかったりするケースが多いようです。単に、彼らが会社を去るきっかけをつくったという結果になってしまうことも。本稿では、企業がリスキリングで陥りがちな3つの失敗と、リスキリングを生かす組織の3つの特徴を解説します。(グッドパッチ 毛利慶二朗)
「モチベーションの高い優秀な社員」のみが
新たなスキルを獲得していく現状
DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進の一環として、「リスキリング」(学び直し)の必要性を感じる企業が増えている一方で、実際に社員のリスキリングに積極的に取り組むことができている企業はまだまだ少ない。
取り組んでいるとしても、学ぶ内容や業務への生かし方は、「社員の主体性」に任せている場合が多いのではないだろうか。
もちろん、社員の主体性を重んじて学習機会を与えることは重要だが、それだけでは「モチベーションの高い優秀な社員」のみが新たなスキルを獲得していくことになる。
その優秀な社員さえも、「獲得したスキルを生かす機会がない」「他の社員とのギャップからパフォーマンスを発揮できない」といった状況に陥ることも少なくない。そうすると、優秀な社員は会社から離れてしまうだろう。
では、企業側は、どのように、社員のリスキリングと向き合えば良いのだろうか?
本稿では、さまざまな企業の、デザイン人材(※)の育成や組織づくりをサポートしてきた私たちの経験から、「リスキリングで陥りがちな失敗」と「DXと相性の良い組織の特徴」を紹介していこう。
※例えば経済産業省の資料では、「デザインを基軸にしてリーダーシップを持ってビジネスの中核に立てる人材」「デザインのスキルと、ビジネス、テクノロジーのスキルが結合した人材」を「高度デザイン人材」と呼んでいる
まずは、実際に私たちに寄せられる相談を例に、よくある失敗パターンを見ていこう。失敗を避けるためのポイントも併せて解説する。