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インキュベーションの虚と実

ピボットは罪か必然か
カン違いせず、大胆にやる事業転換

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第21回】 2013年2月18日
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 ピボットって何だろう。ピボットは失敗を意味するのか?(1コマ漫画を示して)「I'm not leaving you. I'm pivoting to another man」(私はあなたと別れるわけじゃないの。もう一人にピボットするのよ)。つまりピボットは乗り換えるってことか?ニューヨーカーのユーモアのセンスは好きだね。

 スタートアップの原典ともいえるのがchasm(カズム、溝)だ(参考「キャズム」ジェフリー・ムーア著)。1980年代にワークステーションが注目され、50社ほどのスタートアップに投資がされた。みなそれぞれに顧客を獲得し、売上をつくったと言ったのだが、本当にそうではなく実験としてだったと分かることになる。そして、たった3社だけがカズムを越えることができたのだ。いまも同様なことが起こっている。アドテクノロジーもそうだ。沢山スタートアップが生まれ、行き場を失っている。traction(トラクション、顧客・ユーザーを引っ張る力)は本当のトラクションなのかが問われる。

 (デザイン・グッズのネット販売の)Fab.comは、初めはゲイ向けソーシャル・ネットワークのFabulisが、女性向けフラッシュ・セールスのサイトにピボットして成功した。グルーポンは、最初は政治的な活動のグループを募るThePoint.comだった。成功物語のInstagramは、現在地や写真を共有できるソーシャル・チェックイン・アプリのBurbnから始まったが、ユーザーが何のために使うのかに注目してピボットした。

 自分が経験した例を紹介しよう。私が創業したCovadは、当初は通信会社向けの@Home(ケーブル会社数社による高速インターネット接続サービス会社) をねらったが、1996年に規制が変わったので最初のCEOをクビにしてDSL(デジタルデータ通信)サービス会社に転換した。初めはベンチャー・キャピタルから$12Mしか集められなかったが、1998年にIPOして$9Bの時価総額になったからハッピーさ。ワイヤレス・ネットワークのスカイパイロットは、初めはメッシュネット(端末同士が相互に通信を行う、mesh=網の目状の通信ネットワーク)を狙ったが、システムに転換し、さらにクリーンテックでスマートグリッドへとビジネス・モデルをピボットして買収された。同じくブルペン・キャピタルのポール・マーティーノは、マーク・ピンカスと三番手のソーシャル・ネットワーキング・サービスのTribe Networkを創業したが、やがてピンカスはソーシャル・ゲームのZyngaにピボットした。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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