同性愛を「ネタ」に、過去にも同じ炎上が

 さらに、人気声優2人がエイプリルフールのネタ投稿を謝罪。この2人はどちらも女性で、自身の名前とともに「このたび正式にお付き合いする運びとなりました事をご報告させていただきます」とツイートしていた。

 批判が集まったことを受け、それぞれ「傷つけてしまった皆様へ重ねてお詫び申し上げます」「不快に思わせてしまった皆様、傷つけてしまった皆様、本当に申し訳ありませんでした」と謝罪した。

 性的マイノリティーの当事者らや支援者があきれるのも無理はない。同性愛を「ネタ」にすることへの批判は昨年も起こっていた。

 2022年には人気アイドルグループの乃木坂46メンバーが元メンバーと「挙式」したことを、写真を添えてSNS上に投稿。このとき、ハフポストの記事『乃木坂46メンバー、「同性との挙式」をエイプリルフールに投稿し物議。「性的マイノリティをネタとして消費」と専門家』の中では、「ネタにすることで、当事者に『私たちはいないことにされている上、笑いや冗談のネタとして消費される存在』というメッセージを送ることになる。マイノリティの側の生活を脅かす構造や抑圧に加担することにもつながりかねません」と指摘されていた。

 日本では同性婚に根強い反発があり、自らが性的マイノリティーであることを周囲に明かせない当事者も多い。最近では、岸田首相の前秘書官が「(同性愛者は)見るのも嫌だ」という失言で更迭されたニュースも記憶に新しい。

 元秘書官の差別発言は国内外で批判を呼んだが、このような発言が報じられると「一体何が悪いのか」と差別を上塗りするような声がSNS上に多く書き込まれる。実際に差別はいまだに残っている。

 その日だけの「ネタ」として同性愛者のフリをして関心を引くことは残酷だ。普段から性的マイノリティーに関するニュースや、構造的な差別がどういうものかに注意を払っていないと、その残酷さが理解できないものなのかもしれない。問題を顕在化させることに心を砕いている当事者らからすれば、その無関心さもまた、傷つけられる要因だろう。

 同性愛を「ネタ」にしてしまった声優たちは、昨年同じ「ネタ」で炎上してしまったアイドルがいたことを知らなかったのだろう。そのように無関心でいられることが「特権」のひとつであると、マジョリティー(多数派)側が知らなければならないのではないか。