先代もいろいろ考えたのでしょう、ある日、会議室のホワイトボードに「サウナ白夜」って書いてあったんです。いまだったら結構いいと思うんです。サウナブームですし、フィンランド=白夜と連想する昭和の感じも、一周して渋いじゃないですか。個人的にはそういう伊勢佐木町にありそうな渋い感じは大好きなんですけどね(笑)。

 でも、幅広い人に来ていただかないと経営が成り立たない。「スパ」という言葉の響きがあれば、サウナは男性のものというイメージを払拭できると思ったんです。僕も借金背負ってやると本気で覚悟を決めていましたから、最終的には先代も折れ、「じゃあ、勝手にしろ」と言ってくれました。だから社員には、自分たちが決断した方が、思い入れもできるから絶対にいいといつも言ってます。

 当時は、とにかく女性に来てもらいたかった。女性こそサウナに入るべきだと思っていましたし。でも、僕が帰国した90年代半ば、日本では男女雇用機会均等法など施行されて少し経ってはいましたが、まだまだ男性優位の社会。サウナ利用者も8割が男性で女性は2割でした。僕が帰ってきて建築図面を見たら、案の定男湯、女湯の面積が8:2。それだとこれからの時代に合わないと、なんとか6:4ぐらいに変更させてもらって。

 あとはコーポレートアイデンティティ、CIも一新しました。留学中にCIの重要さをすごく感じていたので、ロゴやイメージを新しく統一することは、旧来のサウナが持っている古いイメージから脱却するには有効だと思ったんです。当時、知り合いがニューヨークのデザイン会社に勤めていて、彼に頼んで60万円かけてロゴマークを制作したんです。僕は、そんなに高額なギャラだとは思わない。大きな企業のCIはケタがまったく違うじゃないですか。でも、当時の会社の人たちにはそういう感覚がありませんから、「ちょっと描いて60万とか泥棒じゃないか!」って(笑)。

写真:「スカイスパYOKOHAMA」フロント「スカイスパYOKOHAMA」フロントの写真