こうして2016年、企業版ふるさと納税の第一号として、この制度で最大規模の額となる5億円の寄付が実現したのです。
似鳥会長は、「財政破綻した夕張への寄付は、北海道への恩返しの一つだ」とおっしゃっていました。
漢方薬大手ツムラもニトリにつづく
その後、漢方薬の分野で日本トップのシェアを誇る株式会社ツムラからも3億円の寄付をいただきました。同社は、2009年から夕張に根を下ろして生薬の原料となる植物の栽培・加工を行っています。
会長だった芳井順一さんとも親しくさせていただきました。芳井会長は北海道で生薬の原料となる植物の栽培を始め、ツムラを日本最大の生薬会社に育て上げた方で、常々、「中国から生薬を買う時代から、中国に日本産の生薬を売る時代にしたい。夕張でキックオフして、そういう時代をつくっていく。それが私の夢なんだ」
と、熱い思いを語っておられました。
夕張市への寄付は日本最多に
企業版ふるさと納税による夕張市への寄付は、日本最多の金額になりました。
「今年は夕張に支援をしてくれたニトリさんやツムラさんのおかげで、8億円のふるさと納税を夕張のために使えることになりました。私の年収はどんなに頑張っても300万円足らずで家族にはまったく褒められないけど、こうやってみんなが喜んでくれるのがなによりのご褒美です」
と、冗談交じりで夕張の皆さんに報告すると、
「直道君、お給料安いのに頑張って8億円もいただいてきたんだから、大好物の餃子をつくってあげる。食べにいらっしゃい」
市民と私の間では、こういうざっくばらんな会話がいつものことだったのです。
寄付金により開業した
夕張市拠点複合施設「りすた」と認定こども園
ニトリからの寄付金の一部は、当時、清水沢地区に建設予定だった拠点施設「りすた」に投入させていただきました。「りすた」が開館したのは2020年3月のことで、私は新型コロナ対策に奔走していたためオープンに立ち会うことはできませんでしたが、2022年4月26日に視察に訪れました。
「りすた」はJR廃線後の交通機能の結節だけでなく、行政窓口や子育て、図書館など人との交流もつくる拠点複合施設です。毎日外でバスを待っていた子どもたちは、りすたで「帰りにみんなで遊べて嬉しい」と喜んでいました。
市内の保育園と幼稚園を統合して新設された認定こども園は、ツムラからの企業版ふるさと納税を活用しました。
市長時代に毎年入園式や卒園式に出席していた私は、子どもたちが雨漏りした古い建物や狭い場所で過ごす環境を変えたかったのです。
『逆境リーダーの挑戦 最年少市長から最年少知事へ』(PHP新書)鈴木直道 著
こども園の広いホールや園庭で遊んでいる子どもたちを見ていたところ、保育園の先生が「みんな、知事が来たよ」と声をかけました。すると、知事という言葉をまだ知らない子どもたちは、こう言いながら駆け寄ってきてくれました。
「えっ、じじ? 誰のじじが来たの?」
私は、本当に嬉しかった。
実現までに時間はかかりましたが、計画と資金集めに奔走した日々の苦労がいっぺんに報われ、やはりこの施設をつくってよかったと、心から思ったのです。







