ニトリの似鳥会長に直談判で寄付5億円!鈴木直道・北海道知事の夕張市長時代の奮闘記4月9日、統一地方選挙の北海道知事選で当選確実となり、喜ぶ鈴木直道氏(中央) Photo:JIJI

2006年に財政破綻が明らかになった北海道夕張市。翌07年には国の「財政再建団体(現・財政再生団体)」に指定されました。そんな夕張市の再生に挑んだのが、現在の北海道知事である鈴木直道氏でした。鈴木氏が「企業版ふるさと納税」による寄付を募り夕張ゆかりの企業をまわる中、寄付第1号に名乗りを挙げたのは、家具製造販売大手「ニトリホールディングス」の似鳥昭雄会長でした。本稿は、鈴木直道『逆境リーダーの挑戦 最年少市長から最年少知事へ』(PHP新書)の一部を抜粋・編集したものです。

夕張市にゆかりがあったニトリ

 財政再生団体である夕張市は、財政再生計画に計上されていないことを実行しようとしても、「災害その他緊急でやむを得ない場合」を除き、何をするにもまずは国の同意が必要です。

 しかし、借金返済のみの再生計画では、まちは疲弊していく一方です。「地域を再生して豊かにするための財源を、自ら捻出しなければ」との思いから、市長2期目の私は夕張にゆかりのある企業をまわり、「企業版ふるさと納税」による寄付をお願いしました。

 最初にお願いしたのは、株式会社ニトリホールディングスです。

 1967年に「似鳥家具店」として札幌市で創業した同社は、ご存じの通り、国内最大手の家具・インテリアの小売店。似鳥昭雄会長は常々、「ニトリは北海道に育ててもらった」と語り、今も本社を札幌に置いています。

 もともとニトリは、夕張市が財政破綻した2007年から、夕張が日本一の桜の名所となって多くの人が訪れるようにと何万本もの桜を植樹し、「ゆうばり桜まつり」のスポンサーにもなるなど、応援してくれていました。

 夕張派遣時代の私は、ボランティアの一員として「ゆうばり桜まつり」の会場で鹿のフン拾いや祭りの運営に参加していたとき、似鳥会長の来賓挨拶を聞きながら、「似鳥さんの応援のおかげでお祭りができて本当によかった」と思っていました。

似鳥会長とつないでくれた百百代夫人

 直接お話しするようになったのは、ニトリの創業以来、会長を支え続けている百百代夫人との出会いがきっかけです。百百代夫人は、私が都庁から夕張に派遣されたことをテレビのニュースで知り、「なぜ夕張のような大変なところに?」と関心を持たれたそうで、私が市長選に出ることになったとき、「応援したい」とわざわざ会いに来てくださいました。それ以来、似鳥夫妻は親しく接してくださるようになったのです。

 私が夕張市長に就任してからは、似鳥会長からはよく「逆境に挑戦しろ」「不可能を可能にしろ」と言われました。会長自身、ニトリを現在のように成長させるまでは逆境の連続だったということで、若き日の自分と私を重ね合わせるかのようにして、接してくれていたのではないかと思います。

ロマンとビジョン

 こうした関係性が築かれていくなか、企業版ふるさと納税制度(地方創生応援税制)が創設されることになりました。ただ、個人版ふるさと納税とは違って手続きが非常に煩雑なため、制度をつくっても目立った実績は上がらないのではないかと政府は懸念していました。しかし、財政の厳しい夕張市にとってこの制度は大変ありがたい制度であり、全国の自治体にとっても軌道に乗ればたくさんの新しい試みが実施できるだろうと考えました。

「それなら、この制度が成立したらすぐ、似鳥さんに相談してみよう」と思いました。

 似鳥会長がよく口にする言葉は「ロマンとビジョン」です。世のため、人のために人生を懸けて貢献する「志」を持つことが「ロマン」。ロマンを持って仕事に向き合い、それを実現するのに必要な目標や計画を持つことが「ビジョン」です。「夕張の破綻は北海道の低迷の象徴だった」と語る似鳥会長は、夕張のことを破綻当初から案じ、応援を続けてくれていました。

 寄付というのはそこに寄せる思いとともに、世の中の耳目を集めて応援の機運を高めるうえで「一番乗り」にも意味があります。私はそう考えました。

「日本を代表する企業であるニトリが、企業版ふるさと納税の第一号として夕張に寄付をすると表明すれば、必ずや注目される。ニトリが先陣を切れば、あとに続く企業が次々と出てきて、政府の懸念も払拭されるはずだ。ニトリからの寄付金は、夕張のまちを今後十年で変えていくことに使わせていただく。夕張をずっと応援してくれているニトリにふさわしいし、似鳥会長の言う『ロマンとビジョン』にも合致するはずだ」

似鳥会長に直談判

 私は思い切って、似鳥会長のもとへ直談判に行きました。

「企業版ふるさと納税制度が始まって最初に日本一の寄付をすれば、記憶にも記録にも残ります。それをやるのは、今までずっと北海道を応援してくださっているニトリ以外にありません。ぜひ、お願いします」

 その場で似鳥会長は3億円もの寄付をすることを即決。その額に驚いた私は、ふるさと納税の制度をつくった菅義偉官房長官と石破茂地方創生大臣に、これから企業版ふるさと納税の普及を進めるうえで素晴らしい一歩になるだろうとの思いから電話をしました。

 その直後、似鳥会長から電話が入り、

「3億円寄付しようと思っていたが……」

 てっきり、「これはやはり金額が多すぎて減額されるのだろうな」と身構えていたら、

「5億円寄付することにしたよ、夕張の未来のために」

 私は驚きのあまり、「ふ、増えるぶんには大変ありがたいことです……」とお伝えするのがやっとでした。