なんとなく始めた仕事が
なんとなくうまくいく理由
現に、「夢なきゃ論」に基づき、自分のやりたいことを見つけ、それに向かって努力することで、成功する人もいます。
しかし、将来の目標や夢を抱いたからといって、必ずしもよい結果につながるわけではありません。
実際、「夢なきゃ論」が、将来就きたい職業を尚早に決めつけることにつながり、自分の思い描く夢の姿だけを求めて職を転々とし、離職率アップにつながる報告さえあります。
それとは真逆に、強い目的意識や情熱なしに、なんとなく始めた仕事やプロジェクトをなんとなくやっていくうちに、人生の生きがいを見つけられる人たちも大勢いるわけです。
考えてみれば、将来の目標は、それまでの体験や知識に基づいて決めるもの。
自分の知らない職業をやりたいと夢見ることは原理的にできないのです。
そのため、今自分が将来の夢だと情熱を燃やすものがあっても、今後の体験や学習により視野が広がることで、やりたいことが変わるのはごく自然なことです。
そうした変化にオープンな気持ちで、自分の将来を考えていく必要があります。
また、現在の社会のニーズと、子どもたちが就業年齢に達したときのニーズが、同じである保証はありません。
むしろ大きく違っていることが予想されます。
現在ある職業の多くが人工知能などに置き換えられ、今ある職業がなくなっていく。その一方で、新しいニーズに合わせた新たな職業が生まれる。
子どもたちは、今存在しない職業に向かって学んでいかなくてはいけないのです。
自分の体験や知識だけでなく、まわりの世界や環境の変化にもオープンな気持ちで将来を考えていくことが必要です。
自分の確固たる情熱を先に意識し、それに合った道を見つけていく「先決めタイプ」と、歩み出した後に自分のやっていることに意味を見つけていく「後づけタイプ」。
ここでしっかりと意識しておくべきことは、どちらのタイプでも、人生に生きがいを感じたり、幸福感を得られることは可能だということです。
今日から改めたい習慣
大切なのは、子どもにとって、「先決め」か「後づけ」か、どちらのタイプがいいかを決めつけないことです。
夢を持てた子どもたちには、そうした将来の夢を後押しして支援する。
その中で、子どもの気持ちや状況が変わったときには、フレキシブルな視点で新しい方向性を見つけるサポートをしていくのが大切です。
一方、将来の目標を持っていない子どもたちを焦らせてはいけません。
しっかりした夢を持たない子どもを叱りつけるのではなく、好きなことや得意なことをサポートしながら、目標を見つけやすい環境をつくってあげましょう。
また、職業や将来の方向性の具体的なことも大切ですが、社会的目的やインパクトに注意を向けてあげるようにしましょう。
どれだけの人たちを助けられるのか。
どのように社会が改善していくのか。
その職業がどのようにそれに貢献するのか。
どんな仕事でも人助けや社会貢献などの大義があります。
そうしたものを考えながら、目標に向かう中で、自分の内発的な動機づけを育てていくことができるのです。
「先決め」か「後づけ」か。
「夢なきゃ論」を決め込み、子どもを急かして、やりたいことを強引に決めさせるのは、今日から避けたほうがいいようです。
拙著『スタンフォード式生き抜く力』には子育てをするときに、大切なマインドセットと具体的なトレーニング法が書かれています。私の初の著書として出し惜しみなく、書き尽くしましたのでぜひご活用ください。