日本人はなぜマスクを習慣化できた?「変化を嫌う人」も納得の効果的方法【書評】Photo:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。今回取り上げるのは、新しいアイデアや商品などを打ち出した際に、社内外で必ずと言っていいほど出現する「変化を嫌う人」への対応策を明らかにする一冊です。

日本人が「マスク着用」を習慣化できたのは
「ゆるい規制」のおかげ!?

 今年5月8日から、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行する。それに向けて、厚生労働省は「マスク着用」について、3月13日以降「個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断が基本」とする方針を発表した。

 ところが、市中で観察する限り、1カ月以上たった今でも、まだほとんどの人がマスクを着けている。筆者もそうだ。2020年より前は、マスクがあまり好きではなく、インフルエンザや花粉症の流行があってもかたくなに着用を拒んでいたのだが、今やどうだろう、外に出るときにマスクを着けるのがすっかり習慣になっている。

 それでも、「着けてほしい」よりも「着けても着けなくてもいい」と言われた方が、気持ちはラクだ。おそらく、今の季節は花粉症や黄砂もあるので着けたままの人が多いが、暑くなっていくにつれ、着けない人が増えてくると予想される。

 感染拡大当初から、日本が他国よりもマスク着用を徹底できた要因について、「日本人特有のマナー意識や同調圧力のおかげ」だとする意見がよくある。だが筆者には、それだけではないように思える。

 行政の指導がロックダウンのような厳しいものではなく、「マスクを外したら罰金」といった罰則もなく、お願いレベルのゆるい規制にとどまったからではないだろうか。

 社会心理として、強制的な命令で選択の自由が制限されると、かえって反発したくなるものだ。これを「心理的反発(心理的リアクタンス)」というそうだ。半面、規制がゆるければ、選択の自由は担保される。そして各自が自らリスクを考慮し、合理的にマスク着用を判断できる。こちらは「自己説得」と呼ばれる心理だ。

 こういった「変化と抵抗」にまつわる心理について詳しく解説するのが、今回紹介する『「変化を嫌う人」を動かす』である。

 ビジネスの世界では、魅力的なアイデアや新商品を打ち出した際に、なぜか人々に受け入れられず、反発に遭う場合がある。本書では、そうした普及を阻む「抵抗」の正体と対処法を、豊富な事例とともに詳述している。著者のロレン・ノードグレン氏とデイヴィッド・ションタル氏は、ともにノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院教授だ。