海運業界を沸かせた空前のコンテナバブルは幕を閉じた。業界2位の商船三井は、3年で1.2兆円規模の投資を計画し、脱・海運の動きを加速させている。特集『海運バブル終焉 手探りの船出』(全7回)の#5では、橋本剛社長が10年先の商船三井の姿である「総合社会インフラ企業」構想を明らかにする。将来の成長をけん引する“第四の柱”とは。(ダイヤモンド編集部 梅野 悠)
コンテナ以外も安定収益に
脱炭素でエネルギーに商機
――新型コロナウイルス感染拡大を背景とするコンテナ運賃の高騰によって2期連続で最高益となりました。
コロナ禍に伴う物流混乱が収束し、コンテナ運賃はほぼ正常化しました。一方、荷動きは生産や消費が再開してきた中国では良いですが、在庫調整が深刻な欧米では良くないです。若干悪目といえるでしょう。
ただし、エンドユーザーから見ると、コンテナは使い勝手が良く、海運の各事業の中でも、コンテナ事業の成長余地は比較的大きいと思います。もちろん、市況産業なのでこれからも良い時、悪い時を繰り返すと思いますが、今後も重要性が高いことは間違いありません。
損益に関しては、財務体力が付き、コンテナにとどまらず、各部門ともそれなりに安定した利益を出していける状況になってきたとみています。
――3月に発表した新たな中期経営計画には、2025年度までに総額1.2兆円を投資する計画を盛り込みました。注力していく事業は何でしょうか。
コンテナ事業に関しては、持っている競争力を失わずグローバルで存在感を高める方向は変わりません。
今後、力を入れるのはエネルギーの輸送です。LNG(液化天然ガス)のみならず、LPG(液化石油ガス)やアンモニア、水素なども含めます。
特にガスを液化してガスタンカーで運ぶビジネスは、脱炭素の流れの中でまだ拡大していく余地があり、このビジネスを狙います。輸送だけではありません。洋上でLNGや石油を貯蔵・生産する海洋事業などにも力を入れます。
――新たな中計では、2750億円を投資して非海運事業を拡大する方針を示しました。
次ページでは、橋本氏が「脱・海運」を進める狙いを明らかにする。橋本氏は10年先の商船三井の姿を示した「総合社会インフラ企業」構想を披露。従来の海運ビジネスからの大きな転換となる「第四の柱」について解説する。