海運バブル終焉 手探りの船出#3Photo:JIJI

日本郵船の新社長に4月1日付で曽我貴也氏が就いた。同社では近年、4~5年で次の社長にバトンが渡されるのが慣例だ。実は、昨今の日本郵船ではかつては重視されてきた「学閥」や「出身畑」といったトップの選定条件が変わってきている。4年後の社長レースの最右翼とは。特集『海運バブル終焉 手探りの船出』(全7回)の#3では、海運業界盟主の社長レースの実情に加え、次期トップ候補に浮上している幹部4人の実名を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 梅野 悠)

日本郵船で4月に新社長が就任
歴代首脳は財界でも強い存在感

「私の全人格をもって、職務に全うしていこうと決意している」

 日本郵船が昨年12月に開いた社長交代会見で、新社長に内定した当時CFO(最高財務責任者)だった曽我貴也氏はそう意気込みを語った。曽我氏は今年4月1日付で社長に就任。前任の長澤仁志氏は会長に就いた。

 海運業界は、ここ数年コンテナバブルに沸き、日本郵船も空前の好決算をたたき出してきた(本特集#1『海運大手3社の合弁「日の丸コンテナ船」、バブル終焉で忍び寄るリスクの正体』参照)。バブルの沈静化がほぼ見込まれていたタイミングで、海運業界の盟主である日本郵船で新体制が発足した。

 三菱財閥を創設した岩崎彌太郎が創業した日本郵船は、140年近い歴史を誇る。三菱グループの社長で構成する「金曜会」の事実上の最高意思決定機関である「世話人会」のメンバーでもあり、名実共に三菱グループの中核企業といえる。

 その存在感は三菱グループにとどまらない。歴代首脳は財界で大きな役割を果たしてきた。1989年から6年間社長を務めた根本二郎氏(故人)は旧日経連(現経団連)会長として、経団連発足に道筋をつけた。

 ほかにも、99年から5年間社長を務めた草刈隆郎氏は、政府の規制改革会議の議長として規制緩和に取り組んだ。また、近年の歴代首脳は経団連の副会長を務めている。前会長の内藤忠顕氏こそ「パスした」(日本郵船関係者)ものの、経団連副会長ポストは“指定席”といえるのだ。

 海運業界での盟主という存在のみならず、財界でも大きな存在感を持つ超名門企業。今春、曽我氏がそのトップのバトンを受け継いだ。

 84年に日本郵船に入社した曽我氏は自動車船事業やコンテナ船事業を中心にキャリアを築いてきた。海外駐在の経験もある。2015年には経営委員(現執行役員)に就任し、昨年に取締役・専務執行役員CFOに就いていた。

「キャリアの豊富さに加え、人の意見をしっかり聞く傾聴力が非常に高い」。昨年12月の社長交代会見で、長澤氏は後任である曽我氏をそう評している。曽我氏は、ポストバブルの新たな針路を指し示すリーダーとなる。

 ただし、近年、日本郵船のトップ選定の傾向はかつてとは変わりつつあるという。前出の日本郵船関係者はこう明かす。「バランス型の曽我社長は、歴代首脳とはタイプが大きく異なる」。

 同社は近年、4~5年で社長を交代するのが慣例だ。では、4年後の社長は誰か。次ページでは、「学閥」や「出身畑」が重視されてきた日本郵船のトップ選定の条件の変化を解説するとともに、次期社長レースの最有力候補4人の実名を紹介する。