「身分証明書」ではなく
「本人確認資料」と呼ぶ理由

 銀行において、お客にマイナンバーカードを指定して提示させることは少ない。ただし、 お客が投資運用商品を購入し、我が行で「特定口座」を開設した場合、これまでのお客の住所・氏名・生年月日・届出日に加え、マイナンバーを管轄する税務署に届け出るようになった。

 ちなみに「特定口座」とは、皆さんが一般的に開設している普通口座などの「一般口座」とは異なり、お客の代わりに銀行が配当金に課税される税額を計算し、税務署に納める作業を行っている口座である。

 時系列としてはこんな具合だ。

 2016年から、給与所得の源泉徴収票や不動産の賃貸料支払調書など、所得税や相続税に関する「法定調書」を税務署に提出する際、マイナンバーの記載が義務付けられた。さらに2018年から、預金口座に関するお客の情報とマイナンバーをひも付けた管理が銀行に義務付けられた。

 したがって投資信託、外国送金などの手続きにおいて、マイナンバーの届け出をお願いすることになったのだ。マイナンバーの届け出は、窓口で受け付けるほか、スマホの「M銀行口座開設&手続きアプリ」でも届け出ることができる。

 住宅や年金などの財形預金の口座開設や、証券口座の開設も所得税との関連があるので、マイナンバーの届け出が必要である。ただし、普通預金や定期預金の口座開設は所得税との直接的な関連性はないので、マイナンバーの届け出は義務付けられていない。あくまでも「届け出にご協力ください」といったお願いレベルである。

 しかしながら、普通預金の口座開設であっても、その相手が本人かどうかを確認しなくてはならない。そのために、本人確認資料の提示をお願いしている。ここはあえて「身分証明書」ではなく「本人確認資料」という呼称を用いなければならない。

 現代は江戸時代の士農工商といった身分制度はないものの、「身分という言葉が差別を想起させるので使ってはいけない」と若い頃に上司から教わった。それで「本人確認資料」という呼び方に統一しているようだ。