特定の記録媒体の使用を義務付けるお粗末な法体系が放置されていたのには、理由がある。FD等の記録媒体提出の規定がある手続きには、デジタル手続法が適用されないのだ。4年前、当時の平井内閣府特命担当大臣はデジタル手続法案に関して「デジタルを前提とした新しい社会基盤を構築する」と答弁したが、現実は程遠い。
デジタル臨時行政調査会では、FD等の記録媒体を指定する規制やアナログ規制を含め、全部で9669条項について見直すことを決定し、これらはデジタル規制改革推進の一括法案として今国会に提出された。アナログ規制は7項目計7000以上の規制が取り払われる見込みだ。しかし、これは国だけの問題にとどまらない。
今年3月、宮城県仙台市で起こった不可解な手続きをtbc東北放送が紹介した。ある住民がコンビニでマイナンバーカードを使って印鑑証明を取得しようとしたところ、機械が点検中で使用できなかった。そこで市役所の窓口に行って発行の手続きをすると、条例違反になるのでマイナンバーカードでは発行できず、印鑑登録証のカードが必要だと言われたという。
住民からすれば不信感が募るに違いない。原因は、40年以上も前に制定された窓口対応の印鑑条例が長らく改正されていなかったためだ。社会全体のDXを推進するためには、国も自治体も利用者目線で不合理な規制を見直すことから始めるべきだろう。
(行政システム顧問 蓼科情報主任研究員 榎並利博)