「直情的で柔軟な発想を持つ天才肌」という主役を「冷静で道を外さない秀才肌」がサポートするというのは、とても良い組み合わせのように見えます。
無敵のタッグです。
「大谷翔平の身体を持つAI」は
野球選手として大成するか
AIに頼らず、人類がさらに合理的に進化すればいいのではないかと考える向きもあるでしょう。しかし、人類が「判断に合理性を欠く」という弱点を克服することは、諸手を挙げて喜べるものでもないかもしれません。
弱みと思われる特徴は、強みでもあるのです。
たとえば、メジャーリーガーの大谷翔平選手は、その道を極めて世界的なスーパースターになりました。ただ「彼がもし模範的な意思決定をするAIだったら、もっと活躍できたか」という思考実験をしてみると、そんなことはなさそうだとわかります。
AIは統計が得意です。すると、どんな未来予測をするでしょうか。
野球選手を目指す場合、まずはなんらかの方法で身体的な優位性を確認するでしょう。
たとえばDNAを解析し、野球選手としての才能が世界中にあるDNAの上位何パーセントに位置づけているか分析するかもしれません。さらに、置かれている経済的な事情も検討して、ケガのリスクなども算出したうえで、プロを目指せる確率を割り出すでしょう。プロになったとしても、大谷翔平の身体を持つAIは、メジャーへの道が統計的には低いことを知っているので、ピッチャーかバッターの片方に専念して成功確率を上げ、二刀流を目指すことはないでしょう。AIには本人と同じ道は選べないわけです。
プロになるほどのスポーツ選手の多くは、合理的に考えたわけではなく、根本的に「好き」「楽しい」「(根拠もなく)得意だ」という気持ちがあるからこそ、その道にのめり込んでいった面があるのではないではないでしょうか。
AIは大谷翔平選手になることはできないけれど、こうした人類の「やりたい」を止めることなく、第二の大谷翔平選手を育てるサポートはできます。
非合理な「やりたい」こそが、人類の強みなのです。